全く偶然の菊水神社探訪

ここ最近、当サイトでは白石区にちなんだ地域資源スポットを多数投稿してきた。そして今回も、白石区にある菊水神社の紹介である。ただし今回は、実のところ偶然の訪問であった。本業(社会保険労務士)の関係で近隣の事業者を訪問した際、予定より業務が早く終わり時間的余裕が生じたこと、そして帰路をスマホで確認していたところ、訪問先のすぐそばに菊水神社があると気づいたことから、急遽取材することになった次第である。
ちなみに菊水神社は白石区にあるとはいえ、以前取材した白石神社や白石郷土館、月寒河畔緑地からはかなり離れている(直線距離で5km弱ほど)。これらの探訪スポットが白石区の東側に位置するのに対し、菊水神社は区の北端にあり、白石区と中央区を隔てる豊平川からわずか300メートルほどの場所に鎮座する。この豊平川沿いの白石区側のエリアが「菊水」と呼ばれており、その地域の鎮守として祀られているのが菊水神社というわけである。
菊亭さん+豊平川=菊水

それにしてもアイヌ語由来の地名が多い札幌市において、「菊水」という純和風の地名は珍しい。文献によると、明治11年(1878年)、京都の公卿であり侯爵でもあった菊亭脩季(きくていゆきすえ)が、現在の菊水元町にあたる地に「菊亭農場」を開場したことが由来とされる。菊亭家は大変な菊好きで、数多くの菊を栽培していたことから「菊亭」の姓を名乗っており、この「菊亭」の菊と、付近を流れる豊平川の水にちなんで「菊水」と命名されたのだそう。
現在、菊水神社の周辺には、国立病院機構北海道がんセンターや北海道勤医協札幌病院など大きな医療機関が立ち並ぶ。また豊平川を渡れば、当サイトでも紹介した千歳鶴酒ミュージアムや北海道神宮頓宮、旧永山武四郎邸などにもアクセスでき、なかなか賑わいのある魅力的なエリアとなっている。
元は菊水稲荷神社だった

菊水神社は、元々は「菊水稲荷神社」といい、すなわち商売の神様として祀られていた。大正9年(1920年)、薄野(すすきの)遊廓が「大門通」(現在の菊水西町付近)に移転したことに伴い、翌大正10年(1921年)、中央区南5条西8丁目から伏見稲荷の分神が遷宮されたのが始まりだという。つまり当時は遊廓全盛期の氏神として存在していたことになる。
公娼制度の廃止とともに大門通が衰退すると、神社の存在意義も変化していった。昭和45年(1970年)には御神体が一度伏見稲荷神社へと返還されたが、同年、新たに「菊水神社」として復興するにあたり、新しい御神体(豊受之御霊之神、大山比之命、御子之命、広瀬之命、大宮売之命)が祀られた。現在は、菊水西連合10町内の氏神として地域に根づいている。
宮造りと近代建築の融合

これまで取材してきた神社の中でも、菊水神社はかなりコンパクトな部類に入る。鳥居や境内はなく、ゆえに神社というより祠と形容した方が適切だろう。一般的な神社の社殿は、地面の上に直接建てられた基壇(木造または石造の台座)の上に鎮座するものが多いが、菊水神社はコンクリート製の頑丈で高い土台(1階部分)の上に木造の社殿が載せられた、高床構造をとっているのがユニークであり、町中にありがちな遊具広場(菊水公園)の敷地の奥に唐突にそびえ立っている印象を受ける。
この背景には、かつて豊平川がたびたび氾濫し、そのたびに菊水地区が水害に見舞われてきたという歴史があると考えられる。多くの札幌市民にとって、都市の中心をゆったりと雄大に流れる豊平川は「母なる川」であり、街のシンボルでもある。しかし実は、豊平川は日本有数の急勾配な河川でもある。北海道開発局のシミュレーションによれば、想定しうる最大規模の豪雨(72時間総雨量406mm)が降った場合、堤防が決壊し、決壊からわずか2時間後には氾濫した水がすすきの交差点にまで達するとされている。
地域に愛される小さな祠

コンパクトで鉄筋コンクリート造という、いささか無骨な近代建築の特徴を備える菊水神社であるが、屋根は切妻あるいは流造に近い、伝統的な木造・赤屋根の社殿様式を踏襲しており、拝殿が本殿の機能を統合した、機能的な構造となっている。とても小さな神社ではあるが、神殿として必要な機能と様式をひととおり網羅しているその姿は、零細ながらも生成AIやBI(ビジネス・インテリジェンス)を駆使し、労務、採用、評価、処遇まで、オールインワンで顧客のお悩みに対応する当社の在り方と、どこか重なるものを感じる。
菊水神社では、毎年8月上旬に宵宮祭と本祭が執り行われている。余談だが、この近隣には筆者の一人娘も暮らしており、きっと彼女もこれらのお祭りを知っているに違いない。事情あって我が子が高校に進学する時に離れて暮らすことになったが、今ではすっかり成人し、業界の第一線で活躍している。そんな娘と時折再会し、食事などを楽しむのが近頃の楽しみのひとつであるが、娘が無事に育ってくれたのは、菊水神社の神様方が見守ってくださったからなのだろう…そう思いつつ感謝を込めて参拝し、菊水を後にした。
菊水神社のゆきかた




