神社仏閣

彌彦神社(伊夜日子神社)(札幌市中央区)

2024年2月29日

札幌の緑のオアシス・中島公園に鎮座する神社

彌彦神社の第一鳥居と社号標

札幌中心部からほど近い緑あふれる中島公園。

都会の喧騒を忘れさせてくれるこの公園の一角に、鮮やかな朱塗りの鳥居が目を引く彌彦(伊夜日子)神社が鎮座しています。

新潟県に鎮座する越後一宮・彌彦神社のご分霊を祀るこの神社は、新潟から札幌へ移住した人々によって、明治末期に創祀されました。

100年以上の歴史を刻む彌彦神社は、今では地元の人々にも親しまれる札幌の心の拠り所となっています。

今回は、実際に参拝した時の様子を交えつつ、彌彦神社の魅力を様々な角度からお伝えします。

弥彦神社の社殿の扁額

彌彦神社の社名は「やひこ」と読みますが、「彌彦」は古来「伊夜日子(いやひこ)」と読まれていました。

そのため、現在でも双方の社名が使われているそうです。

彌彦神社のご由緒

彌彦神社の創祀

弥彦神社の社殿側から第二鳥居と第一鳥居を眺める

明治45(1912)年、新潟県から札幌へ移住した人々が中心となり、故郷の越後一宮・彌彦神社のご祭神をお祀りする崇敬会が発足しました。

翌年には崇敬会により仮の社殿が建てられ、これが彌彦神社の創祀とされています。

仮の社殿の場所は資料により異なり、現在地もしくは南7条西1丁目という説があります。

いずれにしても、大正9(1920)年には中島公園の現在地に本格的な社殿が建立されたことは間違いありません。

弥彦神社の第二鳥居に刻まれた奉納者名

第二鳥居には、奉献者として琴似村大字発寒村(現在の札幌市西区発寒)の住人の名前が刻まれていました。

彌彦神社が広く札幌圏の人々の信仰を集めていたことが分かります。

公認神社となり、札幌市民に親しまれる神社へ

秋の彌彦神社の社殿と参道

大正11(1922)年、彌彦神社は公認神社となり(社格は村社)、翌年の例祭からは神輿渡御も始まりました。

当時は隣接する札幌招魂社(現在の札幌護国神社)と例祭日が重なり、大いに賑わったと言われています。

その後、札幌市より境内地の贈与を受け、昭和13(1938)年には郷社へ昇格。

彌彦神社は新潟県からの移住者のみならず、広く札幌市民の崇敬を受けるようになりました。

戦後は昭和45(1970)年に太宰府天満宮より菅原道真公のご分霊を受け、現在は学問成就にご利益がある神社としても親しまれています。

彌彦神社のご祭神

冬の彌彦神社の第一鳥居

彌彦神社には、天香山命(あめのかぐやまのみこと)と菅原道真公(すがわらみちざねこう)の2柱の神様がお祀りされています。

天香山命

新潟の彌彦神社からご分霊を受けてお祀りされた越後開拓の祖とされる神様で、天照大神の曾孫神です。

縁結び、安産、健康長寿、石油開発、商業・工業などのご利益があるとされています。

菅原道真公

福岡県の太宰府天満宮からご分霊を受けてお祀りされた学問の神様です。

天神様とも呼ばれ、学業成就のご利益があるとされています。

彌彦神社に奉納された絵馬の数々

合格祈願の絵馬が数多く奉納されている彌彦神社。

毎年2月には太宰府天満宮の神職と巫女が梅の使者として訪れ、紅梅・白梅を捧げる献花祭が行われています。

彌彦神社の境内

三方を中島公園の緑に囲まれた彌彦神社。

境内も美しく整えられ、清々しい空気が漂っています。

社殿

冬の彌彦神社の社殿

彌彦神社の現在の社殿は、創祀75年を記念して、昭和61(1986)年に新築されたものです。

手水舎

雪うさぎが飾られた冬の彌彦神社の手水舎
夏の彌彦神社の花手水

彌彦神社の手水舎は、近づくと人感センサーで自動的に水が流れるようになっていて、氷点下の札幌の冬も通水しています。

春から秋にかけての花手水の美しさはもちろん、冬は可愛らしい雪うさぎが飾られるなど、参拝に訪れる人々の目を楽しませています。

狛犬と石灯籠

彌彦神社の狛犬
彌彦神社の石灯籠

境内には、大正時代に奉納された立派な狛犬と石灯籠があります。

これらの石造物を制作したのは、どちらも新潟県出身の石工の方々だったとか。

故郷の越後一宮の分霊を祀る神社への思いが込められた、精緻な仕事ぶりが印象的です。

神輿庫

彌彦神社の神輿庫

神輿庫は、社殿の右手奥にある小さな建物です。

ここに納められている神輿は大正11(1922)年に作られ、毎年市内を巡行していました。

お神輿の市内巡行は戦中から長く中断していましたが、平成13(2001)年に60年ぶりに復活しています。

アクセス良好、四季折々の魅力を楽しめる彌彦神社

秋の彌彦神社の境内

四季折々に美しい景色を見せてくれる彌彦神社は、札幌市民はもちろん、観光客も多く訪れる神社です。

周辺には中島公園や札幌護国神社などの見どころもあり、散策にもおすすめです。

地下鉄駅から徒歩圏内とアクセスも良好なので、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

アクセスと参拝時間

アクセス;地下鉄南北線・幌平橋駅より徒歩3分
受付時間;9:00 ~ 17:00
公式HP;彌彦神社公式サイト

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参考文献
「さっぽろ文庫39 札幌の寺社」(札幌市教育委員会 編/1986年)

「新札幌市史 第3巻 通史3」(札幌市教育委員会 編/1994年)
「ほっかいどうの狛犬」(丸浦正弘 著/2007年)

  • この記事を書いた人

福島智美

札幌生まれ、札幌育ちの文学修士。学術からビジネス実務の道へ転身し、山口と共に起業する。学芸員資格者でもあり、北海道博物館での実習経験もある。本サイトでは史跡や寺社などを担当。趣味は和装とフィギュアスケート観戦。

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