アイヌ文化との出会いの場、札幌アイヌ文化交流センター
札幌市中心部から車で約40分、明治時代から湯治場として知られる小金湯の地に、アイヌ民族の歴史や文化を体感できる場所があります。
アイヌ語で「札幌の美しい村」という意味を持つ「サッポロピリカコタン」と名付けられたこの施設、札幌市アイヌ文化交流センターを訪ねました。
札幌市アイヌ文化交流センターの概要
札幌市アイヌ文化交流センターは、アイヌ民族の歴史や文化を学び、その保存継承に取り組む拠点として、平成15(2003)年に開館しました。
広さ1.2haの敷地内には、展示室やホールなどを備えた屋内展示施設と、アイヌ民族の伝統的な家屋や倉などを再現した庭園が広がります。
また、アイヌの伝統工芸体験や古式舞踊の実演など体験型のイベントを年間を通して開催しており、多くの人々がアイヌ文化に触れる機会を提供しています。
札幌市アイヌ文化交流センターを訪ねて
2月某日、札幌市アイヌ文化交流センターを訪ねました。
小金湯の停留所でじょうてつバスを降り、歩くこと5分強、小金湯温泉の斜め向かいにある札幌市アイヌ文化交流センターが見えてきました。
建物2階:アイヌ文化の世界へ
建物2階にある入口から札幌市アイヌ文化交流センターに足を踏み入れると、大きな木彫りの像が目に飛び込んできます。
「ポロ トンコリ」と名付けられたこの像は、アイヌ民族に伝わるトンコリという弦楽器をモチーフに、アイヌ文化の復活と繁栄をイメージして作られたそうです。
力強く優しい表情で来館者を迎えるポロ トンコリ像は、まさにアイヌ文化に触れて学ぶこの施設にふさわしい作品といえるのではないでしょうか。
建物中2階:レストコーナー
入口の右手にある階段を下りると、広々としたレストコーナーが広がっていました。
一面ガラス張りの窓からは、中庭の景色を眺めることができます。
この日はうず高く降り積もった雪で日差しが遮られていましたが、春から秋にかけては、緑豊かな中庭を眺めながら休憩を楽しむことができそうです。
1階:アイヌ文化に親しむ
ストリートギャラリー
中2階のレストコーナーから1階へ向かうスロープは、様々なアイヌの民具を展示するストリートギャラリーとなっています。
アイヌ文様の刺繍が施された手甲や、文様彫りが美しい木製の食器など、アイヌ民族の伝統的な民具が並びます。
ウサギ狩りに使われた罠のミニチュア模型や、食用や道具の材料として使われていた植物など、生活に密着した展示品もあります。
数は多くないながらも幅広いジャンルの展示品がぎゅっと詰まっており、来館者をアイヌ文化の世界へといざなってくれます。
展示室
ストリートギャラリーを抜けた1階右手には、アイヌ民族の伝統的な民具などを展示する有料の展示室があります。
館内の他のスペースとは異なり観覧には入場券が必要となりますので、展示室入口前の自動券売機で購入しましょう。
この展示室には、札幌アイヌ協会の方々が復元製作した衣装や民具など約300点が展示されています。
展示室の最大の特徴は、「見るだけではなく、実際に手に取ることができる」こと。
「男の仕事」や「女の仕事」といったテーマごとに展示された衣装や民具は、実際に手に取ることで、それぞれの役割や使い方をより深く理解することができます。
また、一つひとつの展示物につけられた解説も詳細で、アイヌ民族の伝統的な暮らしをリアルに想像できるでしょう。
有料ではありますが、アイヌ文化をより深く理解したい方には、ぜひ訪れていただきたい貴重な展示室です。
刺繍やアップリケによる独特の文様が目を引く、アイヌの伝統衣装。
一枚ずつ回転式のハンガーラックにかけられており、前身頃も後身頃もよく観察できるように工夫された展示となっています。
アイヌ文化に関する動画の視聴コーナー。
写真は新しい鮭を迎える儀式「アシリチェプノミ(リとプは小文字)」の映像です。
他にアイヌ民族に伝わる昔話のデジタル紙芝居もあります。
ガラス玉をつなげて作られた「タマサイ」という首飾り。
女性が正装する時に身に着けるものだそうで、現代でいうと真珠やダイヤのネックレスのようなイメージでしょうか。
湖や川で使われる、小ぶりの丸木舟「チプ(プは小文字)。
つい乗ってみたくなりますが、「危ないからのらないでね!」の注意書きが…
体験コーナーと情報コーナー
展示室の向かいには、アイヌ文化をより身近に感じられる体験コーナーと、アイヌ文化に関する知識を深められる情報コーナーが設けられています。
体験コーナーでは、刺繍や木彫りなどの製作やアイヌ民族の伝統衣装を身に着けての記念撮影を通じて、アイヌ文化に親しむことができます。
予約不要で無料で体験できるというのも嬉しいポイントです。
また、情報コーナーでは、アイヌ文化に関する書籍約500冊と映像資料を閲覧できます。
貸出はできませんが、絵本など子ども向けの資料も用意されています。
庭園
建物に隣接して広がる庭園は、アイヌ民族の伝統的な家屋や暮らしが再現された空間です。
この日は雪深かったこともあり、残念ながら精米用具や池が再現されている自然の里エリアを訪ねることはできませんでしたが、歴史の里エリアや板綴り舟などを見ることができました。
チセ(家屋)
庭園の見どころの一つが、アイヌ民族の伝統的な家屋「チセ」です。
チセの内部は、囲炉裏のある広い一室と土間というシンプルな造りになっています。家族の座る位置や寝る場所がきめられていたそうです。
この日は風が強かったのですが、屋内は隙間風が入ることもなく、囲炉裏に火が入っていれば冬の寒さも何とか凌げたのではないかと感じました。
イタオマチプ(板綴り舟)
丸木舟にロープや皮で綴り合せた板を取り付けた舟「イタオマチプ(プは小文字)」も、庭園の見どころの一つです。
展示室にある丸太舟が湖や川で使われたのに対し、こちらの板綴り舟は海で使われる外洋船。サイズも全長15mほどと、丸太舟よりもかなり大きめです。
アイヌの人々はこの船で、漁や交易などを行っていました。
アイヌ民族の歴史と文化に触れるサッポロピリカコタン
札幌市南区にある札幌市アイヌ文化交流センター「サッポロピリカコタン」は、北海道の先住民族であるアイヌ民族が育んできた文化に触れることができる施設です。
展示室には、アイヌ民族の伝統的な民具や衣装などが多数展示されており、アイヌ民族の歴史や文化について学ぶことができます。
また、製作体験や古式舞踊体験など、様々な体験型イベントも開催されており、アイヌ文化をより身近に感じることができます。
札幌市の中心部からは少し離れていますが、隣接する小金湯温泉での日帰り入浴とあわせて、サッポロピリカコタンを訪れてみてはいかがでしょうか。
アクセスと開館時間
アクセス;じょうてつバス(快速7H、快速7H、快速8J、12J)「小金湯」停留所から徒歩6分
開館時間;8:45 ~ 22:00(展示室と庭園は9:00 ~ 17:00)
休館日;月曜日、祝日、毎月最終火曜日、年末年始
入館料;無料 ※展示室のみ有料(一般200円、高校生100円、中学生以下無料)
公式HP;アイヌ文化交流センター(サッポロピリカコタン)公式サイト
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参考文献
「新札幌市史 第5巻 通史5(下)」(札幌市教育委員会 編/2005年)