気軽に立ち寄れるサケと淡水生物の科学館
札幌市南区の真駒内公園内にある札幌市豊平川さけ科学館は、サケ科の魚や札幌市内で見られる水辺の生き物が展示されている科学館です。
入場無料で散策の途中などに思い立ったらさっと立ち寄れる気軽さが魅力の、さけ科学館を訪ねました。
札幌市豊平川さけ科学館のなりたち
さけ科学館は、サケの放流・孵化事業や札幌市民がサケの観察や学習を行う場として、昭和59(1984)年に開館しました。
開館に至るまでの背景には、昭和53(1978)年に始まった「カムバックサーモン運動」があります。
札幌市の中心を流れる豊平川は多くのサケが登る川でしたが、戦後の急激な都市化による水質汚染の影響で、高度経済成長期にはサケが遡上しなくなっていました。
しかし、下水道整備が進んだことで川の水質が改善したことから、豊平川にサケの姿を取り戻そうと昭和53(1978)年に始まった市民運動が、カムバックサーモン運動でした。
行政機関の協力を得て、稚魚の放流事業などが行われた結果、運動開始から3年後にはサケたちが数十年ぶりに豊平川に戻ってきました。
この流れを受けて、豊平川と真駒内川の合流地点にほど近い真駒内公園の敷地内に、さけ科学館が作られたのです。
札幌市豊平川さけ科学館の施設
本館
本館は、豊平川の流れを模したステンドグラスの左右に二匹のサケの稚魚が配置された、印象的なデザインになっています。
設計は本郷新記念札幌彫刻美術館本館や中島公園のこぐま座なども手がけた、北海道を代表する建築家の田上義也です。
室内から見ると、川の流れをイメージしたステンドグラスと窓から見える真駒内公園の緑との対比が美しいですね。
展示ホール
展示ホールでは、ジオラマやパネルでサケの生態や人とのかかわりを学べるようになっています。
また、小さいですが売店もあります。サケや水辺の生き物に関連したグッズなど、お土産にいかがでしょうか?
産卵のために豊平川に帰ってきたサケの実物大模型。自由に触れることができるので、実際に訪れてその重さや大きさを体感してみてください。
サケの産卵や成長といった内容はもちろん、こんな展示も。札幌市内の遺跡からはサケの骨が見つかっていますし、開拓初期の入植者の貴重な食料となっていた記録もあります。サケは昔から身近な魚だったのですね。
飼育展示室
展示ホールに続く飼育展示室には、サケ科の魚たちが展示されています。
季節によっては孵化前のサケの卵なども展示されるようです。
また、隣にはサケの採卵や卵の飼育などを行う部屋があり、タイミングが合えばガラス越しに作業の様子を見学できるようになっています。
飼育展示室から地下観察室に向かう経路に吊り下げられていた干し鮭。公式フェイスブックによると、科学館のスタッフの方が毎年作成している本物だそう。そのお味のほどは…?
地下観察室
地下観察室では、屋外にある飼育池で泳ぐサケ科の魚たちを、横から観察できるようになっています。
写真で目を引く白い体を持つ魚は、珍しいアルビノのニジマスでしょうか?
ちなみにさけ科学館の生き物を飼育するための水は、近くを流れる豊平川や真駒内川ではなく、真駒内公園に隣接する学校に掘られた井戸の水を使用しているそうです(昔、近所に住んでいた筆者ですが、全く知りませんでした…)。
屋外観察池
屋外の観察池では地下観察室とは異なり、上からサケ科の魚を観察できます。
時期によってはエサやり体験もできるようですので、詳細は公式ホームページをチェックしてみてくださいね。
さかな館
別館の「さかな館」では、豊平川を中心とした札幌市内の川や池で見られる生き物を見ることができます。
「さかな館」という名称ですが、淡水魚以外にもカエルやカメ、ザリガニなどもお出迎えしてくれました。
200万都市である札幌ですが、その水辺ではこんなにも多くの生き物が生活していることに驚きますね。
さけ科学館のイベント
札幌にサケが戻ってくる時期に行われる「さっぽろサケフェスタ」をはじめとして、川での観察会やサケの採卵実習など、さけ科学館では年間を通じて多彩なイベントが行われています。
イベントの開催予定は公式ホームページで確認できるので、来館予定のある方は事前に確認することをおすすめします。
サケ稚魚体験放流
毎年ゴールデンウィークに開催されるサケ稚魚体験放流は、カムバックサーモン運動に端を発し、科学館の開館当初から続くイベントです。
写真はン十年ぶり2回目の体験放流で頂いた放流証です(時間の都合でクイズラリーはできませんでした…)。
琴似発寒川サケ観察会
秋に行われる琴似発寒川サケ観察会は、科学館スタッフの解説付きで、産卵のために川に帰ってきたサケを間近で観察できる貴重な機会です。
事前申し込みや参加費は不要で、時間内であれば出入り自由。
気軽に参加できることもあってか、この日も数十人ほどの人が訪れていました。
川に戻ってきたサケは、オスは尖った顔に、メスは丸みを帯びた顔になります。
ところが、琴似発寒川のメスのサケは、オスっぽい顔をしている傾向があるそうです。写真はメスのサケですが、確かに少々とがり気味のように見えます。
まとめ
さけ科学館は入場料がかからないこともあり、例えば放課後に真駒内公園へ遊びにきた小学生でも気軽に立ち寄ることができます。
また、今回久しぶりに訪ねる機会を得て、「市民がサケとふれあい、学べる場を」という科学館の設立趣旨にかなった良い施設だと、改めて感じました。
見学時間は1時間ほどなので札幌市民はもちろん市外から訪れた方も、ぜひサケ達に会いに行ってみてください。