麻生町発祥の札幌を代表するとんかつ専門店
札幌を代表するとんかつの美味しいお店といえば真っ先に「とんかつ玉藤」をあげる人は多い。現在は株式会社どうきゅうグループの系列チェーンだが、元々は昭和27年に玉藤光一氏が北区の麻生町で創業したとんかつ専門店がルーツである。
当初はテーブル席が10席ほどの町の小さなとんかつ屋さんで、麻生育ちの筆者は小学校の行き帰りにいつも店先から香ばしい匂いが漂ってきたことを覚えている。やがて玉藤のとんかつの味は評判を呼び札幌を代表するとんかつ専門チェーンとして知られるようになってゆく。
とんかつ玉藤 麻生店 実食レビュー
熟成ロースかつ定食(180g)
筆者は熟成ロースかつ定食を頂く。玉藤のとんかつは厚切りだが柔らかくカリッとした食感の衣をサクサクと軽やかな音を立てて咀嚼すると衣の下から肉汁が溢れ出す。肉の旨味と脂の甘みのバランスも絶妙。スーパーで厚い豚肉を買ってきて自分で揚げてもこうはゆかない。
この秘密は玉藤の熟成豚にある。低温で約18日間も熟成させた豚肉は酵素の働きで保湿性が高まることで柔らかい肉質に変化し、さらにアミノ酸やペプチドが増えてゆくため旨味と香りが増してゆく。これを油切れのよい特製ブレンドのオイルと大きな銅鍋でカラッと揚げる。
玉藤のとんかつソースは辛口と甘口の2種類。辛口はサラサラ食感とピリリとしたシャープな味、甘口はややとろみのある濃厚でまろやかな味。
熟成ひれかつ定食(3個)
相方は熟成ひれかつ定食の3個入を注文した。ヒレ肉は脂身が少ない内臓周辺の肉でヘルシーかつ赤身の旨味が凝縮されている。熟成ロースかつ定食と同様にサクサクと軽い衣と柔らかいヒレ肉の食感が口の中で調和する。一口ほお張ると相方の顔から思わず笑みがこぼれる。
玉藤のサクサクした衣にも同店独自の秘密がある。玉藤の衣は毎日焼き立てのパンを取り寄せ、店内で3日間寝かせて適度に水分を飛ばしてからパン粉に加工している。特注した専用の粗挽きミキサーでパン粉にすることで玉藤独特の角がピンと立ったクリスピーな衣となる。
すり鉢に白ごまを入れ、すりこぎ棒でしっかりすりつぶしてゴマの香りを引き出してからソースを投入する。熱々のとんかつにたっぷりつけて頂く。
玉藤デスかつカレー
実は今回の記事でもっとも紹介したかったのがデスかつカレー。今や玉藤は札幌を代表するとんかつ専門店として確固たるブランドを築き上げており、決して高級店ではないものの大衆店に比べるとかしこまった雰囲気が漂っている。そんな玉藤の悪ノリメニューがこちら。
玉藤デスかつカレーは札幌エスタのデパ地下にある玉藤コーナーでしか販売していない希少メニューであり、辛党を自認する筆者が敗北を喫したラスボス的な辛さを誇る凶悪メニューでもある。その辛さたるや「痛い」というレベル。ルゥの一滴すら完食する筆者でも持て余す。
上階にはとんかつ玉藤エスタ店もあったが、JR札幌駅の新幹線乗り入れ拡張工事のため2023年8月に地階も含めて全フロアが閉館してしまった。
基本メニューとオーダー
基本メニュー
とんかつ玉藤の基本メニューは当然ながらロースカツとひれかつが主力。肉質のグレードとボリュームで12~15種類ほどのバリエーションが用意されている。とんかつ以外にも海老フライや鶏かつ定食などもあり、冬季は土鍋で煮込んだかつとじ定食も提供される。
オーダー方法
ご飯は炊き込みご飯、五穀ご飯、北海道産ゆめぴりかの3種類から選択できる。写真は五穀ご飯。食物繊維たっぷりで身体にも優しい。
味噌汁は赤だし味噌のあさり汁か白味噌のみつ葉なめこ汁のいずれかを選べる。カツオ節は毎日必要な分を削りたての状態で仕入れている。
玉藤は漬物にもこだわっていて、定食には必ず3種類の漬物が用意される。茶色一辺倒になりがちなとんかつ定食に見た目の彩りを添える。
カリーコロンボとの期間限定コラボレーション
とんかつ玉藤は毎年夏になるとカリーハウスコロンボと期間限定のカツカレーのコラボメニューをリリースしている。コロンボは昭和48年(1973年)創業の老舗カレー店であり同店の人気メニューはやはりカツカレー。そのカツを本職の玉藤が供給して話題となった。
カツカレーは大正7年(1918年)に東京浅草の河金がトンカツをのせた丼にカレーをかけて提供したのが始まりといわれている。昭和22年(1947年)に東京の銀座スイスの常連客だった巨人軍の千葉繁選手がカツカレーを特別注文したことで一般に広まってゆく。
当サイトで紹介しているメニューについて
当サイトでご紹介しているメニューの内容および価格は記事投稿時のものであり、各店の事情によって適宜変更となることもあります。現行のメニューと価格については恐れ入りますが各店の公式サイトより直接ご確認ください。(運営者)
とんかつの玉藤 麻生店のゆきかた
店内の雰囲気
とんかつ玉藤麻生店の店内は木の温もりが感じられる落ち着いた雰囲気。相当に年季の入った卓はかつて筆者が麻生町で暮らしていた頃から使われているものだろうか?シートはカウンター席、テーブル席、小上がりがあって独りでもグループでも気軽に利用できる。
営業時間とアクセス
残念ながら玉藤麻生店は2024年3月17日付けで閉店することになってしまった。実は筆者は麻生育ちで小中高時代は同店の前を通って通学していたこともあり大変馴染みのあるお店であった。残念ではあるが半世紀もの長きに渡る営業に心よりの敬意を表したい。
今は無き玉藤麻生店の正面。筆者が育った麻生町から札幌市のとんかつを代表する名店が生まれたのは誇らしい限り。ありがとう玉藤麻生店。