名前の由来は神様のお告げ
五天山公園は札幌市西区福井地区にある総合公園である。五天山公園という名前は、福井地区と平和地区の間に位置する標高303.5mの五天山のふもとにあることに由来する。
昭和初期に開拓のためにこの地に入職した農民が、大国主神からのお告げにより、この山の頂きに祠を建立し、天竺の山を意味する五天山神社と名付けた。それがそのまま山や公園の名称として受け継がれたそうだが、これはアイヌ地名が多い北海道では珍しい。
五天山公園を散策する
水車小屋
五天山公園は西区初の総合公園として、採石場跡に平成21年に開園した。敷地面積は24.587haで、同じ西区にある宮丘公園よりひとまわり小さく、農試公園の2倍ほどの広さである。
宮丘公園が原生林と融合した自然公園といった趣であるのに対し、五天山公園はスポーツ施設や炊事施設、子供向け遊具などの人工的な造作物が随所に設置されており、どちらかといえばプレイグラウンド的な性格の強い公園となっている。
西野地区など山側のエリアは、明治時代には稲作が盛んな地域だった。かつては脱穀や籾摺り、精米のための水車小屋があちこちで見られたそう。
水車小屋の内部も見学できる。琴似発寒川や左股川の豊富な水と一定勾配の扇状地は水車の運用に最適で、最盛期には140基もの水車が稼働していた。
炊事広場
広々とした炊事広場。使用にあたっては管理事務所に備え付けてある「火気使用申込書」に必要事項を記入し、窓口に提出する必要がある。またBBQコンロやタープテントは管理事務所で有料レンタルしている(後片付けは利用者にて実施のこと)。
もし木炭や軍手を忘れても管理事務所で購入できる。しかも驚くべきことに、なんと冷凍ラム肉や味付カルビー、塩ホルモン、鶏串肉、豚串肉なども管理事務所で販売している。つまり手ブラで来園しても、思い切りBBQを堪能できるということ。これって結構すごくない!?
管理事務所周辺
立派な管理事務所。内部には飲料の自販機があって、ベンチに腰掛けて休憩することもできる。炊事設備や運動施設の利用などは、全てここで申し込むことになっている。
管理事務所に隣接する環境学習館。この日はあいにくの休館日だったが、開館時はホタルの観察会、焼き芋づくりなど様々なイベントが開催される。
管理事務所の左側には小さな食堂もある。こちらも定休日だったが、普段はカレーライスやかけそばなど、オーソドックスなメニューを提供している。
五天山公園と宮丘公園は同じ会社が管理している。ワイルドな雰囲気の宮丘公園と違い、こちらは華やかなおもてなしの演出が随所に見られる。
パークゴルフ場
パークゴルフは北海道十勝の幕別町が発祥であり、北海道の広大な土地を活かした本格的なコースと、ゴルフを簡略化したシンプルなルールが特徴のローカルスポーツである。堅苦しいマナーなどは皆無、そしてコース内は禁煙なので、老若男女を問わず誰でも気軽に楽しめる。
五天山公園のパークゴルフコースは3コース×各9ホールの全27ホールで構成されており、プレー料はこの記事の投稿時点で27ホール券が大人400円、65歳以上270円、こども180円と大変リーズナブル。これは相方とパークゴルフにチャレンジするしかない(次回乞うご期待!)。
五天山公園のパークゴルフ場は車椅子の人もプレーを楽しめる。また道具を持っていない人には、クラブとボールを有料でレンタルしてもらえる。
子供の遊び場
郊外にある自然豊かな公園にしては珍しく、子供向けの遊具がとても充実している。平日はこんな感じでほぼ貸し切り状態。日頃お子さんとコミュニケーションする機会の少ないお父さんは、思い切って年次有給休暇を取って、お子さんと一緒に五天山公園に出かけてみては?
まるでワンダーランドのようなユニークな遊具が揃っている。子供の成長は早いもの。子が小さい時こそしっかりと親子の想い出づくりを。
五天山を模したようなジャングルジム。高所恐怖症の筆者は小さい頃からこういった遊具は苦手。落下事故に備え父母付き添いで遊ばせたいもの。
きちんと車椅子利用者のための滑り台も用意されている。札幌市内には沢山の公園があるが、このタイプの滑り台は初めて見た。これはすごい。
芝生広場と小さな沼
芝生公園と小さな沼のエリア。札幌市の公園らしく人工物と自然との調和が美しい。シャープなデザインの東屋を下ると、有機的に湾曲した小径に沿うように小沼が伸びてゆき、3本の噴水でフィナーレ。モエレ沼公園のようなアーティスティックな空間を愉しむことができる。
ちなみに芝生公園でのボール遊びは禁止。この沼は水生動植物の貴重なコロニーとなっており、誤ってボールを落としてもザブザブ入って回収できない。
ちょうど開花時期が終わって軸だけが残ったミズクサ。いわゆる蒲の穂というヤツ。晩秋になるとこの穂がバラバラになって周囲に種子を撒き散らす。
市街地ではあまり見かけないカイツブリの親子。北海道ではカイツブリは夏の渡り鳥として知られており、晩秋には越冬のために本州へ渡ってゆく。出発まであと2ヶ月くらいだろうか。来たるべき長いフライトに備え、少しでも早く子供たちを一人前にしようと、親鳥も懸命だ。
第1見晴らし台
芝生広場から五天山を登って第1見晴らし台にやってきた。たいした標高ではないが、周囲に何も無いせいか、とても眺望が良い。ここから望遠レンズでいろいろ撮影したかったのだが、なんと取材中に愛用のニッコールが電気系トラブルで急逝してしまった。…合掌。
第1見晴らし台に向かう途中には、休憩用のベンチも完備されている。麓から第1展望台までは大人の足なら10分くらいでたどり着くことができる。
最近すっかりトンボの接写にハマっている相方が撮影したノシメトンボ。北海道全域に生息するオーソドックスな種類で、茶色い羽先がトレードマーク。
第2見晴らし台
さらに10分ほど登って第2見晴らし台に到着すると先客がいた。地元の人だろうか、独りで黄昏れているような様子。本当はアノ位置が一番眺望が良いのだが、全く譲ってくれそうな気配が無いので、見知らぬオッサンの哀愁漂う後ろ姿をカメラに収めつつ、先へ進むことにした。
再び相方の力作。これは胴体が茶色っぽいのでアキアカネ。全身が真紅に染まるド派手なナツアカネと比べると、なんだか日本的な風情を感じる。
こちらはオヤジアカネ。平地に降りて背中をボリボリと掻きながら所在なげに公園をうろつく。それにしても後ろから撮影されていたとは…不覚。
花園の丘
順路が前後したが、見晴らし台へは花園の丘の真ん中を貫く大きな階段を登ってゆく。我々が来園したのは9月なので、とっくに開花時期の旬を過ぎてしまったが、それでもまだ色鮮やかな紫陽花などが咲いていた。花のシーズンになったらぜひ再訪してみたい。
花園の丘の階段の様子。中腹くらいから大きな階段が無くなって、散策路のような小径となるが、第2見晴台まではきちんと舗装されている。
ルートを確認する相方。実は花園の丘を通らなくても、公園の端から写真のような山道づたいに見晴らし台にアクセスできる。ここらはお好みでどうぞ。
ホタルの小川
1970年まで、このあたりではたくさんのホタルが見られたそうだが、都市化による影響で、現在は左股川の湿地帯にわずかな生息が確認されているだけである。そこで五天山公園では、未来の子供たちにホタルを残すべく、ホタルの小川を設けて生態系の復元に取り組んでいる。
五天山公園に生息しているのはヘイケボタルで、成虫はオスが8mm、メスが10mmと小型である。なお園内のホタルの採取は禁止されている。
球技広場
五天山公園には小さな野球場も完備されている。筆者は野球にはほとんど興味が無いが、職場対抗の草野球などにはちょうど良いサイズなのではないかと思われる。プレーの後は炊事広場でジンギスカン大会などを催して、相手チームとの懇親を深めることもできそうだ。
札幌の公園にしては珍しくバスケットボールコートもあった。ハーフなので3×3用なのだろうが、ギャラリースペースが広々として盛り上がりそう。
極めつけはスケボー用のミニランプ。そして奥には硬式テニスコートまである。規模こそ小さいが運動公園としても充分に通用するのではないか。
五天山公園のゆきかた
実は我々が五天山公園を訪れるのは今回が初。これまで腰が重かったのは、五天山公園には公共交通機関の最寄り駅が無いため、同じ西区の宮丘公園や農試公園に比べると、なかなか行ってみようという気分になれなかったからだ。しかし実際は案ずるより生むが易しだった。
来園して感じた五天山公園の魅力はその守備範囲の広さ。総合公園ながら野球にバスケ、テニス、スケボー、パークゴルフといった運動施設が豊富で、さらにBBQや自然観察スポット、、郷土資料、眺望などの見どころが盛りだくさん、子供向けの遊具もとても充実している。
今度の週末、子供たちをどこに連れてゆこうか…などと悩んでいるお父さんには、ぜひ五天山公園をオススメしたい。
開園期間とアクセス
アクセス
・地下鉄琴似駅もしくはJR琴似駅よりJRバス琴41乗車→五天山公園停留所下車
・地下鉄発寒南駅よりJRバス発41乗車→五天山公園停留所下車
※無料駐車場あり(544台)、夏季AM7時〜PM7時、冬季AM8時〜PM5時
公式サイト;五天山公園(五天山・宮丘パークマネジメントグループ)
JRバスは青色と白色のツートンカラーが特徴。乗車時間はだいたい20分程度。BBQで飲酒したい人は必ず公共交通機関で来園すべし。