市内を一望できる人気の散策コース

天神山緑地は、札幌市豊平区の天神山にあります。
広さ約6.4ヘクタールと規模は大きくありませんが、眺望に恵まれ藻岩山や札幌市街を見渡すことができるほか、日本庭園などの見どころもあります。
隣接する2つの神社とあわせ、手軽な散策コースとして親しまれています。
天神山緑地を散策する

今回は夏と冬の2度にわたって天神山緑地を散策しましたので、その様子を紹介します。
緑地内の散策路は一部がロードヒーティングになっており、冬でも安心して散策を楽しむことができるため、季節を問わず犬を散歩させている人を多く見かけます。

天神山のキタキツネ

園内の西側斜面で出会ったキタキツネです。札幌の市街地では以前から度々目撃されたキタキツネですが、最近は人慣れが進み、市内の公園で巣穴が発見されることもあるそうです。
キタキツネに寄生する「エキノコックス」という寄生虫の卵が人間の口に入ると、「エキノコックス症」という病気を引き起こします。キタキツネを見かけても、エサをやったり手で触ったりしないように注意しましょう。
展望テラス・芝生広場

天神山の標高は90m弱と「山」というより「丘」といった高さですが、展望テラスや芝生広場からは札幌の中心街や藻岩山などを望むことができます。
平坦な土地に独立して山がある天神山の地形は、支笏湖ができた時の噴火で流れ出た火砕流の堆積物を、豊平川の流れが削ったことでできたといわれています。
冬季は視界を遮る樹葉が少ないため、芝生広場から札幌市街地がよく眺望できます。


展望台下の樹に生えていた大きなキノコ。コフキサルノコシカケという名前らしく、猿が腰掛けられるほどしっかりと樹に貼り付いているのだそう。
天神山の遺跡

天神山の西斜面では、縄文時代の遺跡や、江戸時代にアイヌの人々が作った「チャシ」の跡などが見つかっています。
平岸地区では他にも縄文時代の遺跡が発見されており、発掘された石器などの一部は平岸郷土資料館で見学することができます。
天神山緑地の見どころ
さっぽろ天神山アートスタジオ

頂上近くにある「さっぽろ天神山アートスタジオ」は、世界各国の様々なアーティストが中長期間に渡って滞在しながら、作品づくりや調査・研究を行うことができる施設です。

1階の一部は一般にも開放されており、展示スペースのアート作品を観賞したり、文化・芸術関係の書籍を閲覧したり、散策の途中で休憩したりと、自由に過ごすことができます。
日本庭園

日本庭園は天神山アートスタジオの向かいにあります。札幌軟石をはじめとした北海道産の石材が使用された庭園内には、池や小さな滝もあります。
冬の散策中、日本庭園の周辺で「コン、コン、コン…」という音がしました。この辺りにはアカゲラが生息しているので、木をつついていたのかもしれませんね。

天神藤

天神山緑地の大きな見どころの一つが、この「天神藤」です。
開拓時代に入植者が持ち込んだ北海道最古の藤の木といわれており、樹齢200年を超えるその姿は甘い花の香りと相まって圧巻の一言。
来訪日は平日でしたが、晴天だったこともあってか駐車場が満車になるほどの人で賑わい、取材に訪れた地元TV局スタッフの姿も見られました。
毎年5月下旬~6月初旬が見頃とのこと、タイミングが合えばぜひ訪れてみてください。
リンゴにちなんだ2つの文学碑
天神山緑地のある平岸地区は昭和30年代頃までリンゴの産地として有名でした。それを記念して、天神山緑地にはリンゴに関する文学碑が2つ建てられています。
久保栄文学碑

緑地の北東には、札幌生まれの劇作家・小説家である久保栄の文学碑があります。
平成3(1991)年に建てられた石碑は、表に戯曲「林檎園日記」の一場面が、裏面には久保栄の略歴が記されています。
久保栄は北海道を題材とした作品を多く残していますが、その中でも「林檎園日記」は平岸のリンゴ園をモデルとして書かれた作品として知られています。
平岸林檎園記念歌碑

石川啄木が函館で代用教員をしていた頃に知り合った女性について詠んだ「石狩の都の外の君が家林檎の花の散りてやあらむ」という短歌が刻まれた歌碑です。
この女性の実家が札幌市東区で果樹園を経営していたことからリンゴの花を題材として詠まれた歌で、平岸と啄木に直接のかかわりはありません。
昭和41(1966)年、宅地化により平岸からリンゴ園が姿を消していく中で、その記憶をとどめようとこの一首を取り上げた石碑が建立されたそうです。
天神山緑地にある2つの神社
天神山緑地には「相馬神社」と「平岸天満宮・太平山三吉神社」という2つの神社が隣接しており、いずれも緑地内から行くことができます。
相馬神社

相馬神社は明治35(1902)年に、福島県の「相馬太田神社」の分霊を祀ったことに始まります。
元々、天神山の現在地には札幌神社(現在の北海道神宮)の遥拝所がありましたが、そこへ相馬神社が移転したのは大正5(1916)年のことです。
境内には樹齢300年超のクリのご神木や、平岸村開村50年記念碑などがあります。
平岸天満宮・太平山三吉神社

明治36(1903)年、当時天神山一帯を所有していた札幌の豪商・南部源蔵が、故郷の福岡県の「太宰府天満宮」の分霊を受けて創建したのが、平岸天満宮です。
天満宮の祭神である菅原道真は「天神様」とも呼ばれ、いつしか神社の建てられた山も「天神山」と呼ばれるようになりました。
なお、昭和57(1982)年に太平山三吉神社の分霊を受け、現在は一つの社殿に二つの神社が祀られています。
季節を問わず楽しめる天神山緑地

今回ご紹介した以外にも、天神山は春は桜、初夏には藤が美しいことで知られています。いずれこれらの時期に再訪して、改めてその様子をお知らせしたいと思います。