公園・散策路

新川さくら並木(札幌市北区)

北国の春を告げる桜の並木道

新川さくら並木の長さは日本一

新川さくら並木のエゾヤマザクラ

札幌市北区と西区の間に流れる新川河岸の「新川さくら並木」は日本一長い桜並木として知られており、その全長は10.5kmにも及ぶ。並木道にはソメイヨシノとエゾヤマザクラが交互に植えられていて、満開時は紅白のコントラストが美しい、桜の大回廊が出現する。

ソメイヨシノ

ソメイヨシノは日本全国に生息するポピュラーな品種で、サクラ開花予想の標本木としても知られる。北海道の道央圏が北限とされている。

こちらは赤色が鮮やかなエゾヤマザクラ。本来はオオヤマザクラというが、冷涼を好み主に北海道に多く生息するためこの名前となった。

エゾヤマザクラ

新川は正式名を「新川・琴似川」という全長12.5kmの2級河川だが、多くの札幌市民は地名そのままに「新川」と呼ぶのが一般的である。なお新川はかつて暴れ川として知られた旧発寒川の治水と新川地区の開墾のために、明治20年(1887年)に造られた人工河川である。

旧発寒川は手稲山麓を源流とし、西区の中心部を貫いて北区の伏籠川に注いでいたが、毎年のように大洪水を起こすため、旧発寒川を分断するように新川地区から石狩湾まで一直線に伸びる人工河川を掘削して治水に成功した(分断後の上流側を琴似発寒川という)。

地域住民による地域資源の創生

新川さくら並木のソメイヨシノ

新川さくら並木は、平成10年(1998年)から3年間かけて地域住民の手によって整備された。新川は洪水防止のための無機的な人工河川ということもあり「地域に誇れるものを作りたい」という地域住民の強い想いから、今からおよそ35年ほど前に桜並木を造成する構想が持ち上がる。

そこで地元の老人クラブが桜を10本植樹したが、当時の河川法に抵触して撤去されてしまった。しかしその後、河川法が改正されて堤防への植樹が可能になると、新川さくら並木造成の機運が再び高まり、寄贈された755本の桜の苗木と2,800万円の寄付金をもとに起工した。

資金調達や行政への許可申請など、全て地域住民が中心となって進めたため、相当な苦労や困難もあったようだが、夢の実現に向けた地域の熱意と努力が実を結び、当初計画より2年早い3年間で755本の植樹が完了した。また寄贈された苗木のうち85本は松前町からのものである。

新川さくら並木のスタート地点

北海道大学側(南東側)のスタート地点。新川を挟んで北区と西区に分かれるが、桜が密集しているのは北区の新川地区の側。

名実ともに新川地区のシンボルに

新川夜桜の行灯

植樹にあたっては、石狩湾から吹き付ける厳しい寒風にも耐えられるように、寒さに強いエゾヤマザクラも一緒に植樹することになった。このような工夫の結果、新川さくら並木は札幌市内でも有数の桜の名所となり、毎年多くの花見客が訪れて賑いを見せるまでになった。

平成13年(2001年)から新川さくらフェスティバルが毎年開催されていたが、残念ながら同フェスティバルは新型コロナ感染拡大によって令和2年(2020年)で終了する。代わりに平成30年(2018年)から夜間に桜並木をライトアップする新川夜桜というイベントが続いている。

特筆すべきは平成30年に「国土交通大臣表彰 手作り郷土(ふるさと)賞」の一般部門に選定されたことだろう。これは地域資源を創出し、全国に広くプロモーションして個性と活力ある郷土づくりに取り組んでいる地域を表彰すべく、昭和61年(1986年)に創設された制度である。

新川さくら並木にある力士若勇碑

新川橋ふもとに建っている「力士若勇(わかいさみ)碑」。かつて新川地帯は農村で収穫期には奉納相撲が行われていたが、そこで無双を誇ったのが若勇という農家兼業の力士だった。

持続可能な地域資源であり続けるために

新川さくら並木の遠景

マナーを守って貴重な地域資源を大切に

新川さくら並木のある新川通りは片側3車線の大きな幹線道路であり、中央卸売市場へ向かう大型トラックなどの往来も多いため、一時停止したり運転しながらの撮影といった危険行為は厳禁である。また小さなお子さん同伴の場合は河川敷に近づかないように注意したい。

今回は大量の撮影機材で景観スポットを占拠している輩も見かけた。いい写真を撮りたい気持ちはわかるが、新川さくら並木はあくまでも公共のものであり、誰にも撮影スポットを独占する権利は無い。手早く撮影を済ませて後続の人に場所を譲るのが大人の態度というものだ。

新川さくら並木への地域住民の想い

最後に、案内看板の新川さくら並木にかける地域住民の想いを読んで筆者の胸も思わず熱くなってしまったので、以下に紹介して本記事の締めくくりとしたい。ともあれ春風に揺れる桜並木をのんびりと散策しながら、短くもはかない北国の春を満喫してみてはいかがだろうか。

この「新川夢の桜並木」は、川の流れを見て育った地域の住民の間で、実現を夢見て語り継がれてきた長年の願望でした。新川連合町内会は、この熱い想いを汲んで桜並木を「新川地区街づくり」の一環として、夢の実現に取り組みました。これは21世紀への贈り物とする、壮大な事業です。子供達が将来の夢を抱ける故郷、後世の人達が故郷新川を誇りに思える街にしたいと願う郷土愛が、この桜並木に込められ、寄付とボランティアで実施される事業であり、大切に育てていきたい。

新川連合町内会 新川地区緑化推進協議会

新川さくら並木へのアクセス

・地下鉄二十四軒駅→JR北海道バス「軒32」乗車、南新川停留所を下車し徒歩1分
・地下鉄北24条駅→JR北海道バス「軒32」乗車、南新川停留所を下車し徒歩1分
・地下鉄大通駅→JR北海道バス西14丁目停留所「37」乗車、南新川停留所を下車し徒歩1分

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  • この記事を書いた人

山口光博

札幌育ちの人事コンサル。リテール業界に詳しく学生バイト時代を含めるとコンビニ、食品スーパー、総合スーパー、問屋&物流センターなど、流通チャネルに関わるほとんどの職場を経験。地元とスープカレーをこよなく愛す。

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