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神社仏閣

龍神神社(若松龍神)(札幌市豊平区)

天神山の隠れたパワースポット:知られざる龍神神社

龍神神社(若松龍神)の社殿

公園として整備され、多くの人が散策に訪れる札幌市豊平区の天神山。

その麓、有名な天神藤のそばに、ひっそりと隠れるように佇む小さな神社があります。

何度か参拝したものの、社号標も見当たらず、その由緒は謎に包まれていました。

しかし先日、社殿の裏に神社の沿革が書かれているのを発見。さらに、この神社について記された郷土誌を見つけることもできました。

本記事では、その内容も織り交ぜながら、知られざる龍神神社の魅力をお伝えします。

正式名称は?「龍神神社」と「若松龍神」

天神藤の入口
龍神神社は天神藤のすぐそばに鎮座している

この小さな神社の名称については、社殿の裏側に記された由緒書、そして郷土誌「平岸百拾年」では、「龍神神社」と記載されています。

一方で、Googleマップなどのインターネット上では、ご祭神名でもある「若松龍神」という名称で紹介されています。

本記事では、神社の由緒書を尊重し「龍神神社」を正式な社号とみなして、「若松龍神」を通称として併記しています。

龍神神社(若松龍神)の建立秘話:昭和初期の苦難が信仰を生んだ

龍神神社(若松龍神)の鳥居

龍神神社の創建は昭和8(1933)年(社殿の由緒書による。「平岸百拾年」では昭和9(1934)年)。

社殿の由緒書によると、かねてからの不景気に加え、集落で病弱な人や不幸が重なる者が出た折り、たまたまリンゴ園を徘徊する大蛇が噂となり、これが不幸をもたらしているとして、龍神を祀ったのが始まりとあります。

一方、「平岸百拾年」をみると、より詳しい創建の事情が分かります。それによると、元は「山際孫四郎、末廣愛吉、塩崎幣作がそれぞれ市有地内に祀ったものを山際孫四郎の所有地に合祀した」とされています。

また、その地には蓮の池があったそうで、水神である龍神を祀るにふさわしい場所だったことが伺えるでしょう。

なお、同書によると当初の境内地は平岸2条16丁目で、昭和41(1966)年に現在地へ移転しています。

時代背景から紐解く:人々の切なる願いと龍神信仰

昭和10年頃の札幌市街
昭和10年頃の札幌市街
(北海道大学付属図書館所蔵)

前述のように、龍神神社創建の背景には、昭和初期の不景気のほか、病弱者の発生など相次ぐ不幸があったとされています。

昭和初期の日本経済は世界恐慌の影響を受け(昭和5(1930)年前後の昭和恐慌)、多くの人々が不景気に苦しんでいました。

また、「新札幌市史」によると、北海道は昭和6(1931)年から同10(1935)年にかけて相次ぐ凶作に見舞われ、特に昭和6年の凶作は被害が甚大でした。

平岸村が含まれる豊平町においても、農家の65%が凶作の被害を受けたという記録があります。

さらに、凶作に伴う飢餓や貧困により伝染病も多発。昭和7(1932)年と同8(1933)年のジフテリア患者の発生数は、北海道が全国一だったといいます。

このような社会情勢の中、生活が少しでも楽になるようにと、リンゴ畑に現れた大蛇を龍神の化身としてお祀りした当時の人々の切実な思いが感じられます。

龍神神社(若松龍神)のご祭神

龍神神社(若松龍神)の社殿

龍神神社のご祭神は、白大王権現と若松龍神の2柱です。

同名の神をお祀りする神社は全国的にも珍しく、インターネットで検索しても、龍神神社の他に見当たりません。

もっとも「若松龍神」の名やご由緒からして、龍神を祀っていることに間違いはないでしょう。一般的に龍神は水を司るとされ、様々なご利益があるとされています。

地域の人々の暮らしに深く根ざした信仰が、ここにあったことが伺えます。

龍神神社(若松龍神)の参拝:訪れるなら春がおすすめ

ここでは、実際に龍神神社を参拝した際の様子をご紹介します。

天神藤と龍神神社(若松龍神)に続く通路
写真左下の柵で区切られた箇所が龍神神社に続く通路
(中央は天神藤)

龍神神社は天神山の北西の麓、国道453号に面して佇んでいます。

市内有数の藤の名所である「天神藤」のすぐそばですが、場所は少々分かりにくいかもしれません。

国道453号の歩道から天神藤に続く道に沿って、柵で区切られた細い通路があり、その先が龍神神社へと通じています。

社殿は国道に背を向ける形で建てられていますが、春から秋にかけては生い茂る木々に囲まれているため、国道側からはその姿を見つけることが難しくなっています。

そのため、天神藤を目当てに訪れる人も、この神社の存在に気づかないことも少なくないようです。

木々に囲まれた龍神神社(若松龍神)
木々に囲まれた龍神神社

もし龍神神社を訪れるのであれば、春が特におすすめです。

ちょうど天神藤が見頃を迎える時期ですし、龍神神社の鳥居もツツジの花に囲まれて、大変美しい雰囲気を醸し出します。

新緑と花の彩りの中で、心静かに参拝するのもよいでしょう。

平岸の歴史を見守る小さな龍神様

天神山緑地の展望テラスからの眺望
見晴らしもよく散策に最適な天神山緑地

龍神神社は、知る人ぞ知る小さな神社です。

しかし、その小さな社には、昭和初期の経済的・社会的な苦難の時期を乗り越えようと人々が信仰にすがり、希望を見出そうとした歴史が詰まっています。

神社の建つ天神山には、相馬神社や平岸天満宮・太平山三吉神社なども鎮座しているので、これらと合わせて参拝するのもおすすめです。

札幌の隠れたパワースポットとして、知られざる歴史と静かな雰囲気に触れてみたい方は、ぜひ一度、この龍神神社に足を運んでみてはいかがでしょうか。

アクセス

アクセス;地下鉄南北線「南平岸駅」から徒歩14分、同「澄川駅」から徒歩11分、じょうてつバス「平岸1条16丁目」停留所から徒歩8分

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参考文献
「平岸百拾年」(澤田誠一 編/1981年)


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  • この記事を書いた人

福島智美

札幌生まれの札幌育ちだが大学時代は京都で過ごす。文学博士前期課程修了、北海道博物館で学芸員実習の経験あり。修士論文の執筆経験を活かし、神社仏閣や郷土資料館の記事を担当。和装とフィギュアスケート観戦が趣味。

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