札幌市中央図書館の市制100年特別展
中央図書館で市制100年特別展が開催された

令和4年10月13日から同年12月13日にかけて、札幌市中央図書館で札幌市の市制施行100年にちなんだ特別展が開催された。そこで今回は特別展の様子をご紹介しつつ、札幌市民のひとりとして当サイトでもブログ記事として記録を残しておきたいと筆を執った次第だ。
ちなみに札幌市中央図書館には札幌市埋蔵文化財センターが併設されていて、主に縄文時代や続縄文時代(自然の恵み豊かな北海道では弥生時代に移行しなかった)などの出土品が展示されているが、今回の特別展はその隣室で開催されたイベントである。
市制施行は開拓使設置から約半世紀後のこと

札幌に北海道開拓使が設置され、北海道開拓がスタートしたのは今からおよそ150年前のこと。それから半世紀ほどを経た大正11年に、当時の札幌区は晴れて札幌市に昇格することになる。そして令和4年8月1日に市制施行から100周年の節目を迎えた。
札幌市の人口は197万人で東京以北では最大の都市である。札幌市の面積は北海道の13%に過ぎないが、道内総人口の4割弱が札幌市に集中している。札幌発展の契機となったのは昭和47年の第11回冬季オリンピックで、以後国内第4位の人口を誇る大都市に発展してゆく。
市制100年特別展の様子をご紹介
特別展は札幌市中央図書館の恒例イベント

札幌市中央図書館はその名のとおり、札幌市内にある地区図書館や区民センター図書室、地区センター図書室の総本山ともいえる施設である。図書の閲覧や貸出サービスにとどまらず、年1回の特別展開催を通じ、地域文化の発信者としての役割を担っているのだ。
札幌都心模型(1/1000スケール)


精巧に製作された札幌都心のジオラマから主なスポットを厳選してクローズアップしてみた。左の写真は札幌市民が愛してやまない大通公園の模型。そして右側は大倉山スキージャンプ場の頂上から撮影した冬の大通公園の様子。冬の札幌は大気が澄んでいて見晴らし良好。


札幌中心部のランドマークタワーとして有名なさっぽろテレビ塔。さっぽろテレビ塔は昭和31年に竣工したが、開業当初は塔全体がシルバーに塗装されていた(現在の色は昭和37年から)。左側のジオラマ模型のテレビ塔の色合いが当時のイメージに近いかもしれない。


北海道開拓のシンボルといえば北海道庁旧本庁舎(通称赤レンガ庁舎)。左側の模型では旧本庁舎と現在の道庁(右側)の位置関係がよくわかる。赤レンガ庁舎は老朽化により令和元年から令和7年にかけて大規模な改修工事中。右の写真は着工の少し前に撮影したもの。


ジオラマの最後は中島公園。まさに都会の中のオアシスともいうべき菖蒲池や左端にある札幌コンサートホールKitaraがしっかりと再現されている。右の写真は初秋の菖蒲池。穏やかな水面に上下対象にクッキリと映り込んだ高層ホテルと樹木の構図は我ながら会心の出来…。
所蔵文献の展示

大通公園の誕生にまつわる文献が展示されていた。大通公園は明治2年に北海道開拓使が札幌の東西を隔てるように整備した幅30mの大通が前身である。当時の木造建築は不燃材が使われておらず、火災時の延焼を食い止めるために市の中心部に大通が設けられたそうだ。

札幌市時計台は明治11年に建設された旧札幌農学校(現在の北海道大学)の演武場。明治44年から昭和41年まで図書館として利用されており、実はこれが2代目札幌市中央図書館だった…というオチ。なおかつての日本3大ガッカリ名所は今では外国人観光客の人気スポット。

札幌駅に関する文献コーナー。札幌育ちの筆者には4代目の駅舎が思い出深い。仕事の都合で13年ほど札幌を離れ、平成26年に帰札した時には駅舎はすでに5代目になっていて、あまりの変貌ぶりに驚愕した。現在は北海道新幹線の乗り入れに向け、大改修工事が行われている。


左の写真は5代目JR札幌駅の南口側。北口側では北海道新幹線延伸に向けて拡張工事を行っており、右の写真は北口側からJR桑園駅に続いていた桑園停車場緑道。四季折々の表情を見せるこの美しい緑道は、新幹線乗り入れ拡張工事のため跡形もなく消滅してしまった…。

これは札幌中心部の百貨店や狸小路(アーケード街)の変遷に関する文献のようだ。半世紀前の札幌中心街では五番館やそごう、東急百貨店が三つ巴の戦いを繰り広げていたが、五番館とそごうは経営悪化により西武グループの傘下となり、ほどなくして道内から撤退した。


代わりに台頭してきたのが大丸(写真左)。大丸札幌店の開業は2003年で、JR札幌駅およびJRタワーなどの再開発と同時期である。写真右は狸小路商店街の4丁目あたりで撮影は2021年1月頃。ポールタウンと連結していた右端のエスカレーターは4年後には撤去される運命に。

4丁目プラザの歴代ポスター。通称4プラは札幌の若者カルチャーのメッカみたいな場所だが、50年分のポスターが一同に会するとさすがに歴史の重みを感じる。開業半世紀を経てすっかり老朽化した同施設は、2025年春に新生4プラとして全面リニューアルされる予定である。

昭和中期に百貨店御三家と呼ばれた三越、丸井今井、五番館の営業案内なども展示されていた。この頃は「三越は見る店、今井は遊ぶ店、五番館は買う店」と言われていたそう。もっとも最近では集客の中心が複合型大規模商業ビルにシフトしている。これも時代の流れか…。


イサム・ノグチに関連した展示も発見。これは大通公園のブラック・スライド・マントラ(写真右)の構想スケッチだろうか?イサム・ノグチは日系アメリカ人の世界的彫刻家であり、その遺作となったのが札幌市東区にある壮大なランドスケープアートのモエレ沼公園だ。
市民のデータセンター札幌市中央図書館
札幌市中央図書館の概要と沿革

市制100年特別展を開催した札幌市中央図書館は、札幌市電の電車事業所(整備場)の近隣にある市内最大の市立図書館である。建物は地上3階、地下2階の構造で、3階に講堂、1~2階が閲覧室、そして地下1階には食堂と、図書館としては多機能かつ充実した設備を有する。
札幌市中央図書館が開設されたのはなんと明治32年。当時は現在の大通西4丁目にあり、その後何度か移転しつつ、平成3年の新築移転を経て現在の場所に落ち着いた。蔵書は88万冊でこれは札幌市内の全ての公設図書館と図書室の所蔵の1/3に相当する冊数になるそうな…。
札幌市中央図書館の関連施設
札幌市埋蔵文化財センター

札幌市中央図書館の最大の特徴は札幌市埋蔵文化財センターが併設されていることだろう。札幌エリアはかつて縄文人が暮らしており、豊かな自然の恵みのおかげで弥生時代に移行せずに独自の文化を築いた。市内では当時の遺跡や土器、石器などが多数発見されている。
札幌市埋蔵文化財センターでは、これら遺跡の発掘調査を行ったり、出土品を収蔵・展示したりしている。一般的な博物館に比べて展示スペースはこじんまりとしているが、機能的で洗練された展示方法により、近世以前の札幌の様子をつぶさに感じられる必見スポット。
やまはなサンパーク

周辺の住民以外にはあまり知られていないが、札幌市中央図書館の裏手にはやまはなサンパークという小さな公園がある。図書館の裏庭は地上より一段深く掘り下げられ、地下1階の食堂から裏庭を経由してやまはなサンパークに抜けることができる。

図書館の裏手(食堂側)から見たやまはなサンパーク。裏庭のスロープを伝って公園にアクセスできる。
図書館周辺は晩秋になると鮮やかな黄金色に染まったイチョウ並木の絶景が出現する。特別展は紅葉シーズンに開催されるのが恒例となっており、特別展を見学するついでに紅葉狩りを愉しむのもまた一興。イチョウの黄金色がくすみ始めるといよいよ厳しい冬の到来だ。
図書館となりで撮影した晩秋のイチョウ並木。写真右が図書館の駐車場およびやまはなサンパーク側となる。

札幌市中央図書館のゆきかた
開館時間とアクセス

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