世にスープカリーを生み出した伝説の店
スープカリーのルーツ
札幌スープカリーというメニューは今やすっかり世間に定着した感があるが、そのルーツは今から50年ほど前に中央区の山鼻地区で或る夫婦が営業していた喫茶店アジャンタの薬膳カリィである。
当初はインドの香辛料と中国の漢方薬をブレンドした薬膳スープにライスを添えた簡素なものだったが、常連客からダシ用の鶏ガラや野菜を捨てずにスープと一緒に出して欲しいとリクエストされ、これが札幌スープカリーの原点となる薬膳カリィの誕生であった。
その後、白石区のマジックスパイスが薬膳カリィをアレンジして正式にスープカリーと命名し、西区の札幌らっきょが大手食品メーカーと提携して全国的なプロモーションを展開したことでスープカリーはメジャーな料理となってゆく。
総本家とインドカリ店
そんな中、当の喫茶店アジャンタはアジャンタ総本家(ご主人)とアジャンタインドカリ店(奥様)に暖簾を分け、互いに「元祖」を名乗りつつ別々の経営によって現在に至る。なお現在はすでにご主人は亡くなりお弟子さんが総本家を継承しているようだ。
それぞれのお店で実食してみた限りではどちらもオリジナルのレシピを忠実に守っているようで基本メニューの構成やスープのテイストはほぼ同一。カレー通に言わせれば厳然たる相違があるのかもしれないが、単なるスープカリー好きの筆者は両店をまとめて紹介させて頂く。
アジャンタ実食レビュー(総本家編)
とりかりぃ
スープカリーの原点となった薬膳カリィを彷彿とさせる「とりかりぃ(チキンのスープカリー)」。やや小ぶりのチキンレッグが2本、大きくカットされたニンジンがほぼ1本分そしてピーマン1個分というシンプルながら豪快なトッピング。
30種類のスパイスと15種類の漢方薬をブレンドして6時間かけてじっくり仕込んだスープはあっさりさっぱりした風味。濃厚ダシがどうこうというよりスパイスそのものをしっかり味わいたい人向けのテイストとなっている。
蒸したチキンはフォークだけで身がホロホロとほぐれるほどに柔らかく、鶏肉の香ばしさとカリースープのスパイシーさがとてもよく合っている。ちなみにこのメニューはインドカリ店もほぼ同じ構成である。
基本メニューとオーダー方法
総本家の基本メニューはとりかりぃ、野菜かりぃ、らむかりぃ(ラム肉)、かしみーるかりぃ(ミートボール)、お子様かりぃなど全8種類とシンプルなもので、骨なしとりかりぃは数量限定、らむかりぃは土日限定メニューとなっている。
スープは1種類、辛さレベルの指定は不可、ライスも普通盛りのみ。ライスは追加料金で大盛りや十六穀米に変更できるが、他のスープカリー専門店に比べると味のアレンジも非常にシンプルなシステム。
各席には辛味スパイスが置かれていてスープカリーを食べながら「追いスパイス」で味変を楽しむ。
ライスは白米の普通盛りが無料でついてくる。だいたい250gくらいだろうか。腹八分のほどよい量。
アジャンタ総本家へのゆきかた
お店の雰囲気
総本家の店内はあちこちにインド風の調度品が置かれているもののゴテゴテした派手な感じはなく、洗練された洒落たレストランといった雰囲気。有名店だけあって来訪したタレントやスポーツ選手の色紙が所狭しと飾られている。
座席はテーブル席が5つとカウンター席が3~4席とまずまずの収容キャパシティがあるが、ランチタイムは30分程度の待ち時間を覚悟しておく必要がある。
営業時間とアクセス
アジャンタ実食レビュー(インドカリ店編)
らむ
「らむ」はラム肉を使ったメニュー。アジャンタ特製の薬膳スープに大きめにカットされたラム肉、ニンジン、ピーマンのシンプルかつ大胆なトッピングは総本家のメニューと同じ。
北海道といえばジンギスカンで知られるようにラム肉料理の本場であるが、本州の人にはラム肉特有の臭みが苦手だという人も少なくない。しかしカリースープとラム肉の相性はとても良く臭みが旨味に昇華されている。ラム肉嫌いにぜひお勧めしたい。
やさい
やさいはブロッコリー、カリフラワー、しめじ、長芋、カボチャ、じゃがいも、ニンジンがトッピングされているが、時期によって微妙に具材の内容が変わっている。恐らく季節に合わせた旬のものをアレンジしているのだと思われる。
多くのスープカリー専門店では野菜を素揚げするのがトレンドだが、アジャンタインドカリ店の野菜は蒸してあるため素朴な優しい風味に懐かしさを覚える。柔らかく甘い野菜たちはピリッとした薬膳スープと絶妙なコントラストを醸し出す。
基本メニューとオーダー方法
インドカリ店の基本メニューはとり、やさい、らむ、らむ筋、かしみーる、はーふ(お子様限定)の6種類。その時々で限定メニューもラインナップされることもあるが全体的に総本家よりもさらにシンプルでメニュー名から「かりぃ」すら省略されている。
スープは総本家と同じテイストのやや辛めの薬膳スープの一択のみで辛さの調節は卓上のスパイスを追加してセルフで行う。ライスも普通盛りだけだが、追加料金で大盛りに変更可能。
インドカリ店の追いスパイス。基本のブレンドは同じだと思うが総本家よりも赤みが強いように感じる。
ライスは総本家同様に普通盛り。インドカリ店は白米のみとなるがらっきょの甘酢漬が添えられている。
アジャンタインドカリ店へのゆきかた
お店の雰囲気
インドカリ店は下町の大衆食堂といった雰囲気の簡素なお店で喫茶店と見紛う外観が特徴的。もともと喫茶店アジャンタ時代も白い壁面に緑色の庇屋根だったので、南22条時代のかつてのアジャンタを知っている人には懐かしさを覚えるかもしれない。
店内はテーブル席が1つ、カウンター席が8席と最大収容人数はおそらく10名前後。インドカリ店はランチタイム営業に特化しており、販促ツールもSNSのみとなっている。恐らく無理のない範囲で堅実に商売したいという経営方針であると推察する。
営業時間とアクセス
当サイトで紹介しているメニューについて
当サイトでご紹介しているメニューの内容および価格は記事投稿時のものであり、各店の事情によって適宜変更となることもあります。現行のメニューと価格については恐れ入りますが各店の公式サイトより直接ご確認ください。(運営者)