札幌の西南端にある風光明媚な国立公園
札幌市の奥庭 定山渓温泉
定山渓温泉は札幌市南区にある国立公園である。札幌市内の公園といっても、都心から路線バスに乗って1時間ほどかかる距離に位置しており、多くの札幌市民にとって、手軽に湯治観光気分を味わうことのできる、奥庭的なスポットとして知られている。
定山渓温泉街のエントランスにあるモニュメントが我々を迎えてくれた。定山渓は、広大なエリアを誇る支笏洞爺国立公園の北の玄関口でもある。
美泉定山と定山渓温泉
定山渓温泉は、安政5年(1858年)に松浦武四郎により発見された。その後、慶応2年(1866年)より、僧侶の美泉定山(みいずみじょうざん)が中心となって湯治場を整備し、近隣の豊羽炭鉱の創業や、定山渓鉄道の開通とともに、市内有数の観光地として発展していった。
美泉定山は備前国(現在の岡山県)出身の真言宗の修験僧。高野山などで修行を積んだ後、慶応2年に名もなき渓谷に移住して定山渓温泉の礎を築いた。
定山渓のみどころスポット
定山渓二見公園で北国の紅葉鑑賞
秋の定山渓といえば紅葉がみどころ。そして定山渓の紅葉スポットといえば、定山渓二見(ふたみ)公園と二見吊橋をあげる人は少なくない。ちなみに定山渓二見公園は、札幌市の公園データベースには収載されていない。恐らくこのエリア一帯を指す愛称なのだと思われる。
豊平川の源流にふれる
定山渓温泉では豊平川の源流に間近に接することができる。豊平川は総延長70km以上の大きな河川で、南区から中央区、豊平区、白石区、東区の間を流れて石狩川に合流する。1970年代のカムバック・サーモン運動の舞台でもあり、札幌市のシンボル的な河川でもある。
定山渓の河童伝説
明治時代にこのあたりで魚採りをしていた青年が、突然川底に沈んで消息を絶った。それから1年後の夜に、その青年が父親の枕元に立ち、河童の妻と子どもをもうけて幸せに暮らしている…と語った。そしてそれ以来、この近辺では水難事故が止んだという伝説が残っている。
定山渓温泉で見かけた河童たち
ユーモラスな河童、抽象的な河童、リアルな河童、レディガッパなどなど、定山渓温泉のいたるところに河童をモチーフとした像やオブジェが設置されている。定山渓温泉全体で、河童を地域資源として盛り上げてゆこうという関係者たちの熱意が伝わってくる。
秋の定山渓なら二見吊橋
二見吊橋から眺める秋の豊平川。右岸が”かっぱの淵”で、伝説となった水難現場(?)である。それにしても水が澄んでいて川底の小石までよく観察できる。この時はサケ・マスの産卵シーズンなので、遡上してくる魚影を探してみるも見当たらず。
二見吊橋にて。風のある日は結構揺れるので、高所恐怖症の筆者には厳しい試練であった…。もちろん橋の真ん中から眺める景色は絶景。
定山渓開拓の守護神 定山渓神社
定山渓温泉街から国道230号線を横断すると大きな鳥居があり、その階段を登ると定山渓神社がひっそりと建っている。創建は明治末期頃といわれており、第二次大戦後には美泉定山も御祭神として祀られている。本殿の後ろには小さな境内社と馬頭観音の石碑もある。
定山寺で美泉定山の足取りを辿る
定山寺は曹洞宗の寺院で、山号を大徳山という。大正5年(1916年)に設置された説法所がそのはじまりとされている。定山寺には宝物殿があり、美泉定山が愛用した品々や直筆の書簡などが多数収蔵・展示されている。見学は無料。
定山渓源泉公園で足湯を愉しむ
定山渓温泉街のエントランスを下るとすぐに定山渓源泉公園がある。ここは美泉定山の生誕200周年を記念して造成された公園で、細長い足湯が特徴的。入湯は無料でAM7時〜PM9時まで利用できる。ちなみに定山渓温泉街にはここ以外にも足湯施設がいくつかある。
大黒屋の温泉饅頭を堪能する
相方イチオシの温泉饅頭。しっとりとした黒糖風味の薄皮の下はホクホクでやわらかい饅頭の生地と、なめらかで甘さと香ばしさが入り混じった餡がたっぷり詰まっている。御当地饅頭は温泉街の定番土産といってもいいくらいだが、大黒屋の温泉饅頭の味は格別。
大黒屋は定山渓源泉公園の向かいにある。とにかく大人気のお店で、当日の予定数を完売したらさっさと閉店してしまうため、朝イチで訪れたい。
岩戸観音堂で心を癒やされる
岩戸観音堂は、定山渓温泉街の北西の突き当り、朝日岳のふもとにある小さなお堂である。このお堂は昭和11年(1936年)に峠道の開削工事の犠牲者の慰霊と定山渓温泉の発展を願って建立された。内部は地下トンネルがあって、三十三体の観音像が祀られている(見学有料)。
秋の風情を満喫できる白糸の滝
定山渓観光協会の公式サイトによると、白糸の滝は北海道で稼働する最古の水力発電所である定山渓発電所の戻り水が、小さな滝状になって流れ出ているものだそう。いわゆる山から流れ落ちる滝ではないので、白糸の滝は国道側にある。我々もつい山側に向かい迷いかけた。
ゴォっと水しぶきを上げながら落下してゆく豪快な滝ではなく、まるで細糸のような繊細に静々と滴り落ちるような可憐な滝。秋の風情たっぷり。
大迫力の豊平峡ダム
定山渓温泉街から豊平峡ダムライナー(専用バス)に乗って20分ほどで豊平峡ダムへ行くことができる。豊平峡ダムは高さ102m、札幌ドーム30杯分の貯水が可能とのこと。ダム湖は定山湖と呼ばれ、切り立った岩盤と四季折々の植物の彩りが美しいコントラストを見せてくれる。
豊平峡ダムは、毎年6月〜10月にかけて観光放水を行っている。毎分何トンくらいを放水しているのかわからないが、間近で見ると迫力満点。
豊平峡ダムライナーの乗車券は定山渓神社の第一鳥居近くの定山渓観光案内所で販売している。当日販売のみ&即時完売なのでお早めに。
定山渓ネイチャールミナリエ
宿泊者限定のPremiumイベント
定山渓ネイチャールミナリエは、6月〜10月の夜間に、定山渓二見公園と二見吊橋をライトアップするイベントで、定山渓温泉街のホテルやオートキャンプ場の宿泊者に限定した、Premium入場となっている。
イベントのテーマは夜の国立公園に現れる水と森の守り神の物語。定山渓二見公園と二見吊橋エリアを河童が棲む神秘の森に見立て、エリアごとに設定したストーリーを、プロジェクションマッピングによって映像化するというもの。
水と森の守り神 河童と戯れる
定山渓二見公園の入口からライトアップされたパーゴラを通って河童の棲む森に入ってゆく。ちなみに右側のベンチは我々が大黒屋の温泉まんじゅうを食べていた場所。紅葉ピークの定山渓二見公園は最高だが、夜のイベントもスキなく作り込まれていて日中に劣らず秀逸。
ここのテーマはForest Water Ripples。地面に水面を映し出し、木々が光り輝く幻想的な空間。水の波紋に、いたずら好きな河童が隠れているかも…といったストーリー。あちこちにプロジェクターが仕込まれていて、定山渓ネイチャールミナリエの壮大な世界観を表現。
この地において河童は、国立公園定山渓に宿る水と森の守り神という設定。河童と巡るナイトウォークと題して、幻想的な夜の森で、河童の軌跡をたどるロマンチックなイベント。それにしてもこのイベントのリーダーはプロデュース力がハンパない。見事な手腕に拍手。
二見公園の入口から河童と戯れる物語が始まり、二見吊橋でクライマックスを迎えるという設定。橋上では3分間のライトショーの後、河童たちが棲家へと帰ってゆく。オッサンも感動するやら感心するやら…。本当に細かなディティールまでしっかり計算して構成されている。
夜の河童大王。プロジェクションマッピングでリアルに歓迎の口上を述べるのだが、ちょいとグロい。そろそろ筆者も宿に戻って一杯やるか…。
定山渓温泉のゆきかた
アクセス
JR札幌駅からじょうてつバス かっぱライナー号(直行バス)乗車、60分で定山渓温泉に到着
じょうてつの路線バスで行くこともできるが、外国人観光客にシートを占領され、乗車できないケースもある。冬季は洒落にならないので、直行便をオススメしたい。
宿泊なら鹿の湯がおすすめ
今回、我々がお世話になったのは温泉街ど真ん中の鹿の湯さん。部屋はおまかせだったが、8階の見晴らしの良い部屋をご用意いただきとても快適に過ごすことができた。
ラウンジも華やか。スタッフの方々が親切で、テキパキと仕事をしているのが印象的だった。
ゆったりとしたツインの和室。やはり温泉街は和室が似合う。タバコ臭もなく、とても快適。
夕食バイキングはコスパ高し。普段は獣肉や小麦粉を避ける筆者も、この日だけは少し羽目を外させてもらった。
参考情報
・定山渓観光協会公式サイト
・札幌観光協会公式サイト
・豊平峡電気バス公式サイト