札幌市水道記念館の概要
「水」を楽しく学べる体験型の記念館
札幌市水道記念館は札幌市中央区の藻岩山の山麓にある、水道と水に関する記念館で、体を動かしながら水のことを学べるほか、野外では水遊びやピクニックも楽しめます。
そんな札幌市水道記念館は、家族連れを中心に毎年10万人以上が訪れ、2017年には累計来館者数が100万人を突破するなど、人気のスポットとなっています。
なお、冬季は休館となりますので、注意が必要です(冬季休館期間は公式ホームページをご確認ください)。
札幌市水道記念館の建物
札幌市水道記念館は、札幌市に初めて水道ができた昭和12(1937)年に作られた、藻岩第1浄水場の建物を利用した施設となっています。
藻岩第1浄水場は機械化・自動化が進んだ当時最先端の設備を備えていたこともあり、近代水道100選や、土木学会の土木遺産などに選ばれています。
札幌市水道記念館の館内
エントランス
記念館の入口に入るとすぐ正面にエスカレーターがあり、上階へ上がることになります。
上階には水が流れ落ちる大型ビジョンがあり、その水はエスカレーターの左右に流れ落ちています。そのためか、上に近づくにつれて、水の匂いが強くなっていきました。
入口では、札幌市水道局のキャラクター「ウォッピー」がお出迎えしてくれます。ここでは、藻岩浄水場で作られた水道水を、持参の水筒やコップに汲んで飲むことができます。
アクアミュージアムゾーン
アクアミュージアムゾーンは「水の旅」をテーマに、水源から流れ出た水が取水・浄水され、飲用水として各家庭に配水されるまでのプロセスを追うコーナーです。
自然環境や水道局の仕事、また水と私達の暮らしとの関わり合いなどについて、見るだけでなく体を動かしながら体験的に学ぶことができるようになっています。
水源の森
水源となる森の自然や、札幌の水源である豊平川や定山渓ダム・豊平峡ダムについて学ぶことができるゾーンです。
粉雪からざらめ雪まで色々な種類の雪の重さを再現したブロックです。ブロックを持ち上げることで、それぞれの重さの違いを体感できるようになっています。
札幌の水道水の98%は、豊平川とその上流の水系から供給されています。
これらの水系に設けられた豊平峡ダムと定山渓ダムは、札幌の巨大な水がめとして、安定した水道水供給に欠かせない存在です。
水工場
「水工場」では、水源から家庭へ水が届けられるまでの過程やその工夫、水道を守るための取り組みなどの水道事業について、実際に使われていた機材や装置を通して分かりやすく解説されています。
模型の中に入って移動することで、「凝集→沈殿→ろ過→消毒」という水道水ができる過程を体感できるようになっています(この日は感染症対策のため、外からの見学のみ可能)。
「ろ過」や「水質検査」などの水の実験ができるスペースです。当日の実施時間や定員は館内のモニターで案内されているので、参加したい場合は事前にチェックしておきましょう。
ガラス張りの床を地面に見立て、地中を走る水道管の様子を再現しています。
ちなみに札幌市の水道管を全てつなげると6000kmにもなり、これは札幌からインドまでの距離になるそうです。
浄水場で作られた水道水を家庭に届けるための配水池・ポンプ場・配水管などの働きを24時間体制で監視・調節する、配水センターの様子が再現されています。
アクアタウン
「アクアタウン」は私達が日常見慣れた街並みの風景をモチーフに、様々な時代や地域の「人と水とのかかわり」を紹介するゾーンです。
スクールバスには、水と暮らしのかかわりにスポットを当てた年表が書かれています。
また、周囲の床面には、世界各国の近代水道の歴史を解説したマンホールが設置されています。
お風呂やお手洗いなどの私たちの家の水回りで、どのくらい量の水が使われているのかを、ペットボトルの本数で視覚的に表現しています。節水の意識が高まる展示ですね。
水道がないために毎日水汲みが必要なアフリカなど、世界各国の水事情が紹介されています。
こうしてみると、いかに日本が水に恵まれているのかがよく分かります。
地震など災害時の水対策を学べるコーナーもあります。よく「家庭では一人当たり3L×3日の備蓄を」と言われますが、いざという時のための備えをしっかりとしておきたいですね。
サイエンスパーク
「サイエンスパーク」は遊びながら水の特性を学ぶことができるゾーンです。ジャングルジムや水鉄砲を利用したスロットなど様々な遊具があり、家族連れに人気のコーナーとなっています。
「水の大循環ジム」と名付けられた、しずくをイメージしたジャングルジムは、このゾーンのシンボル的存在です。この日は残念ながら感染症対策で使用休止となっていました。
ポンプを動かして筒の中のウォッピーを上下させ、黒い輪の部分を通った回数を競う、対戦型のゲームもあります。
水道プレイスタジオ
「水道プレイスタジオ」は、水道水のできる仕組みや水道に関わる人たちの仕事が紹介を通じて、ここまでの展示の総まとめ的な性格を持つゾーンとなっています。
水道水が水源から各家庭に届き、使用後は海に流れて水蒸気を経て雨となり再び水源に還る…という水の循環を、しずくに見立てたピンポン玉の動きで視覚的に理解できます。
水道に関する仕事をしている人たちの紹介コーナーです。
普段何気なく使っている水道水ですが、蛇口に届くまでに多くの人が関わっていることが分かりますね。
水道記念室
アクアミュージアムゾーンとは別に、「水道記念室」という札幌の水道の歴史を学べる展示室も用意されています。こちらは「体を動かして学ぶ」アクアミュージアムゾーンに対し、「見て学ぶ」少し大人向けのゾーンかもしれません。
札幌に水道ができたのは、政令指定都市の中では最も遅い昭和12(1937)年のことでした。会議日数43日・会期62日という超ロングな市議会を経て、ようやく水道の設置が可決されたそうです。
水道メーターの検針や水道料金の集金などに使われていたオートバイです。昭和10年代の水道創設時は自転車でしたが、昭和30年代にはオートバイに変わりました。時代の変遷を感じますね。
その他の館内施設
札幌市水道記念館には展示ゾーンの他にも、いくつかの施設があります。なお、下で紹介した以外にも、キッズルームと多目的ルームがありますが、双方とも感染症対策のため閉鎖中です(2022年度時点。2023年度以降は公式ホームページをご確認ください)。
水に関する本や資料が集められた図書室です。子供向けの絵本から、全国各地の自治体が発行した「水道●年史」といった資料本まで幅広く揃っており、閲覧スペースも用意されています。
エントランスのエレベーターを昇った先は、ギャラリーやサロンスペースとなっており、パネル展示や休憩用の椅子が置かれています。週末には音楽会などのイベントが行われることもあるようです。
札幌市水道記念館の屋外施設
水道記念館は藻岩山の麓の高台に位置するため、天気のいい日には眺望も楽しめます。
また、もいわ山ロープウェイの山麓駅に続く散策路もあるので、記念館を見学した後は藻岩山に登ってもいいですね。
噴水広場
記念館の正面は噴水広場になっていて、水遊びをしたり、周辺の芝生でお弁当を食べたりすることができます。通水期間は毎年6月頃~10月頃となっています。
ちなみに噴水の地下は配水池(水道水の貯蔵施設)になっているそうです。
グラニットボール
記念館の右手前にある「グラニットボール」は、直径90cm・重さ1トンの丸い石のモニュメントです。
大きな丸い石は一見すると台座に固定されているように見えますが、実は水圧で浮いているため、片手でくるくると回すことができます。こんな重たい石を持ち上げられるとは、水の力の強さに驚かされます。
野外展示
記念館や噴水広場の周りには、水道管などの昔の水道設備が展示されています。間近で見ると、水道管の直径の大きさが実感できます。
噴水広場にあるフォトジェニックなサルベージアートは、昔の浄水場で使われていた廃棄部品を組み合わせて作られたものです。
カナール広場
水道記念館の隣にある藻岩浄水場の正面は、水遊びができる遊水路があるカナール広場となっています。カナール=運河をイメージした親水公園といった趣きです。
噴水広場と同じく、こちらでも札幌の市街地を眺めながらお弁当を食べることができます。
札幌市水道記念館のまとめ
日常生活に不可欠な上水道のことを楽しく学べる
札幌市水道記念館は、日常生活に不可欠な上水道について五感を使って学べる、工夫がたくさんの楽しい記念館です。
噴水広場とその下に広がる市街地など眺望もよいので、天気のいい日にピクニックがてら訪れれば、心も体もリフレッシュできるでしょう。
なお、2022年に訪ねた際は、新型コロナ感染対策のため一部の施設が利用できなくなっており、隣接する藻岩浄水場の見学も中止されていました。早く制限が解除されて、記念館の魅力を存分に味わえるようになるといいですね。