公園・散策路

旭山記念公園(札幌市中央区)

札幌市創建100周年を記念した壮大なランドマーク

噴水と眺望が融合した美しい公園

旭山記念公園の噴水広場

大きな噴水とソリフラクションという自然作用によって形成された扇状地が特徴的なこの公園は、札幌市中央区にある旭山記念公園である。旭山といえばユニークな行動展示で一躍人気となった旭山動物園が有名だが、あちらは北海道の真ん中あたりにある旭川市の動物園であり、この公園とは地理的に150km以上も離れている。むしろ旭山記念公園なら円山動物園が近い。

旭山記念公園の沿革

旭山記念公園の園内

旭山記念公園は明治から大正にかけて丘陵地を利用した牧場として利用されていたが、その後、温泉施設、スキー場などを経て、1970年に札幌市の創建100周年を記念して公園に転用された。さらに2009年に大幅なリニューアルが行われて現在の姿に至る(実は筆者が中学生の頃に、学校遠足でリニューアル前の旭山記念公園に訪れたことがある)。

旭山記念公園を散策する

遊具広場

旭山記念公園の遊具広場

筆者が旭山記念公園を訪れるのは2018年以来の5年ぶりとなる。今回は中腹の遊具広場から入園し、展望台へ登った後に裏山の原生林にある散策路をひととおり巡ってから、旭ヶ丘地区へ抜けて帰路につく予定だが、ここ数年、旭山記念公園ではヒグマの出没が相次いでおり、昼間の時間帯とはいえ、来園者が少ないとちょっと緊張してしまう。

旭山記念公園の豊原中学校記念碑

遊具広場付近の樺太庁豊原中学校記念碑。碑文によるとかつて樺太にあった豊原中学校の卒業生が、母校を偲んで昭和54年に記念碑を建立したもの。

公園内で羽を休めるアキアカネ。相方がスマホ片手に、にじり寄って撮影した渾身の力作。アキアカネ以外にも数種類のトンボが生息している様子。

旭山記念公園のアキアカネ

レストハウス

旭山記念公園のレストハウス

遊具広場を登って展望台のふもとにあるレストハウスに到着。レストハウスの売店では、ローストポーク丼や鶏ハムとアボガドのエスニック丼などの本格ランチや、エゾシカフランクといった変わり種メニュー、また西興部(にしおこっぺ)村産の濃厚なバニラソフトクリームなどを味わうことができる。

旭山記念公園の第一駐車場

レストハウス下の第一駐車場。上に架かっている小さな橋は、都心側の展望台エリアと裏山側の原生林との連絡通路となっている。

展望台

旭山記念公園の眺望

展望台から噴水広場と札幌市の中心部を望む。藻岩山や大倉山に比べると旭山記念公園の標高は低めだが、それゆえにかえって札幌市の町並みを身近に観察することができる。それにしても5年ぶりの旭山記念公園は終日晴天に恵まれ、絶好の取材日和だった。

旭山記念公園の展望台の東屋

展望台頂上の東屋。写真右端の時計台はリバティベル(自由の鐘)といい、1980年に札幌リバティライオンズクラブより札幌市に寄贈されたもの。

展望台脇のテラス。展望台のてっぺんとレストハウスの間にある中2階的な場所。程よい木陰で読書や休憩にちょうどよいスペースとなっている。

旭山記念公園の展望台付近
旭山記念公園の全景写真

カメラを水平に動かしながら、5〜6分割して全景を撮影してみる。近頃は高度な撮影技術や特殊な機材がなくても、Googleフォト様が勝手に写真をつないで雄大なパノラマ画像を作ってくれる。そう、伸びしろの乏しくなったオジサンはAIを使い倒して生きてゆくのだ…。

旭山記念公園の段丘状の地形

展望台よりJR札幌駅方面を撮影。旭山記念公園のトレードマークともいえる段丘状の斜面がよくわかる。ちなみに写真中央のひときわ目立つベージュ色の高層ビルがJRタワー。その右側の白い円筒形の建物が札幌プリンスホテル。わかるかな?

旭山記念公園の噴水広場の円形ベンチ

まるで劇場のような噴水広場のベンチ。この場所は札幌市を代表する音楽祭のひとつ、さっぽろ旭山音楽祭が開催されたことでも知られている。旭山音楽祭は1988年の第1回目から2024年で37回を数えるが、現在は中島公園のKitaraが主な会場となっている。

旭山記念公園の連絡通路

展望台の眺望を堪能した後で、いよいよ裏山の原生林ゾーンに入ってゆく。この橋から登山道を通って藻岩山(3km)や西野(9.8km)に行くこともできる。

ミュンヘンの森

旭山記念公園のミュンヘンの森

散策路を進むと左手にミュンヘンの森が現れる。ミュンヘンはドイツのバイエルン州にある人口150万人の都市で、1972年にミュンヘンオリンピックと札幌冬季オリンピックが同時開催となった縁で姉妹都市提携し、その記念としてミュンヘンの森を造成したそう。

大通公園のマイバウムとオータムフェスト

札幌市の中心部にある大通公園には、姉妹都市提携の記念にミュンヘン市から寄贈されたマイバウムというモニュメントがそびえ立っている。この時季の大通公園ではミュンヘン市のオクトーバーフェストに倣って、さっぽろオータムフェストが開催されており、今や来場者数200万人を誇る札幌市を代表する一大イベントとなっている。

森の家

旭山記念公園の森の家

ミュンヘンの森からさらに奥へ進むと、森の家にたどり着く。ここは森の散策路エリアの管理事務所だが、市民のコミュニティセンターとして一般開放している(利用は事前の申し込みが必要)。大自然の中で行うワークショップによって創造力が増進するかもしれない。

旭山記念公園の小林峠への林道入口

ここから西区の五天山公園や南区の藻岩山展望台へアクセスできるが、ヒグマの生息地をモロに突っ切る根性が必要だ→自己責任でどうぞ。

ポートランドの森

旭山記念公園のポートランドの森

森の家から風の丘へ向かう途中にポートランドの森がある。ポートランド市はアメリカオレゴン州にある人口65万人の街で、札幌市と風土が似ていることや、札幌が多くのアメリカ人技師や教育者の指導によって発展を遂げてきた経緯もあり、1959年に初の姉妹都市となった。

札幌の開拓と発展に尽力したアメリカ人達。左から開拓顧問のホーレス・ケプロン氏、「青年よ大志を抱け」の名言で知られるクラーク博士、そして北海道殖産の父と呼ばれるエドウィン・ダン氏。今日の札幌の繁栄は、アメリカからやってきた青い目のサムライ達の熱意と努力の賜物といっても過言ではないだろう。

風の丘

旭山記念公園の風の丘

風の丘に到着。木陰に設置された円い屋根の東屋でしばし休憩する。9月上旬の札幌市は気温が30度近くになる日も散見され、筆者のような冷涼な気候を好む人間にとってはなかなか堪えるが、このような大きな公園ともなると森林を吹き抜ける自然の風が爽やかで心地よい。

旭山記念公園の風の丘の東屋の屋根裏

屋根の裏側。様々な音が反響して不思議な音色を奏で、渦巻き状の意匠が細野晴臣氏の名盤オムニサイトシーイングの世界観を想起させる。

風の丘からいったん巨木の谷に降り、再び原生林側へ戻ると吊り橋が出現する。吊り橋を渡って散策路を下ってゆくと、展望広場に戻ることができる。

旭山記念公園の森の散策路の吊り橋

巨木の谷

旭山記念公園の巨木の谷

風の丘を道なりに下ると巨木の谷に出る。このエリアは意図的にそうしているのかわからないが、石垣の向こう側から舗装路が途切れて獣道のようになる。公園の敷地内とはいえ、本物の原生林に足を踏み入れるようで、恐怖感で先に進むのを躊躇してしまう。

旭山記念公園のクリの木デッキ

バードウォッチングに最適な視点で設置されたというクリの木デッキ。運が良ければシマエナガの愛らしい姿をカメラに収めることができるかも…。

エゾヤマザクラの植樹

旭山記念公園のエゾヤマザクラ

今から半世紀程前に、旭山記念公園の完成および公園麓の旭山公園通の命名を記念して寄贈されたエゾヤマザクラ50本。展望広場をぐるりと囲むように植樹されているらしいので、来年は桜の見頃を狙って再訪したい。

旭山記念公園の寺田京子の歌碑

札幌出身の歌人、寺田京子氏の歌碑。氏は大正11年に札幌市に生まれ、少女期より病身ながら俳壇で創作活動に勤しみ、放送作家としても活躍した。

展望デッキとピクニック広場

旭山記念公園の展望デッキ

古代の城塞を思わせる重厚な建造物は展望デッキ。展望広場に比べてだいぶ目線が下がるが、木々の間から旭ヶ丘地区がよく見える。左側の柵の下がピクニック広場となっており、ヒグマを呼び寄せないためか、炊事設備や屋外テーブルなどの類は設置されていない。

旭山記念公園の展望デッキの内部の様子

展望デッキの内部。東屋とパーゴラの折衷様式で、適度に明るく風通しの良い構造。周囲に気を配りつつ、ちょっとしたモバイルワークもできそうだ。

ちびっ子広場

旭山記念公園のちびっ子広場

展望デッキからいったん噴水広場に戻り、二股道の右側を下ってゆくとちびっ子広場に出る。ちびっ子広場というが大人から見ても結構な急斜面。公式サイトによると冬季のソリ遊びを想定して造成したらしい。右側の案内板のところが公園の出入口となっており、今回の旭山記念公園の散策はここでオシマイ。

旭山記念公園のゆきかた

旭山記念公園の遠景

人工物と自然が高度に融合した旭山記念公園は、札幌市を代表する美しく魅力的な公園のひとつであり、手軽に札幌市の眺望を楽しむことができる人気の観光スポットでもある。公共交通機関によるアクセスはお世辞にも便利とはいえないが、旭山記念公園のもつ独特な雰囲気は訪問の価値アリ。もし機会があれば来園してみることをオススメする。

営業時間とアクセス

旭山記念公園のあちこちに掲示されているヒグマ注意看板

旭山記念公園はヒグマの出没スポットでもあり、早朝や夕暮れ時などヒグマの活動が活発になる時間帯の来園は控えた方がよい。またくれぐれも弁当やお菓子の食べ残しをそこらに放置しないようマナー厳守のこと。

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  • この記事を書いた人

山口光博

札幌育ちの人事コンサルタント。小売業界に詳しく学生バイト時代を含めるとコンビニ、食品スーパー、総合スーパー、卸売など、流通チャネルに関わるほとんどの職場を経験。地元である札幌市とスープカレーをこよなく愛す。

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