スープカリーってどんな料理?
スープカリーは薄めたカレーライスではない
スープカリーは一部で誤解されているようなカレールゥをスープで薄めた類のものではない。スパイスとダシをふんだんに使った濃厚で風味豊かなカリースープにチキンレッグや大きめにカットされた根菜類がボリューミーに添えられた札幌発祥の新しいカレー料理である。
札幌スープカリーの大きな特徴は一度味わったらやみつきになること間違いなしの旨味たっぷりのカリースープもさることながらお店毎に創意工夫したバラエティ豊かなトッピングであり、普通のカレーライスでは想像できないような変わった具材が使われていることである。
ごぼうや大根、レンコンなどといった和風野菜はいまや札幌スープカリーの定番食材。(SAKURA BROWN)
カリーよりもトマト風味を強調した独自テイストのスープにエゾシカというジビエ肉の組み合わせ(Lavi)
味噌ベースのカリースープに焼きホルモンも合う。札幌スープカリーは懐の深さが魅力(Rocca※R5.7/24閉店)
スープカリーの歴史は意外に古い
冒頭でスープカリーは札幌発祥の新しいカレーメニューだと述べたがそのルーツは意外と古く1970年代まで遡る。ここでは筆者の独断と偏見でもってスープカリーの誕生から今日の隆盛に至るまでの歴史を4つのフェーズに分けて簡潔に解説したい。
黎明期(薬膳カリィ時代)
スープカリーの元祖は中央区にあった「アジャンタ」という喫茶店(現在は「アジャンタ総本家」と「アジャンタインドカリ店」に分離して別々に経営)が薬膳カリィと称した鶏ガラベースにカリースパイスで味付けしたスープを常連客に提供したものだと言われている。
草創期(スープカリーの誕生)
その後、白石区のマジックスパイスがアジャンタの薬膳カリィをアレンジして「スープカリー」と命名したことにより、マニアックな常連客向けの裏メニューから晴れてオフィシャルなカレー料理となるが、当時はまだまだ認知度が低くキワモノメニュー扱いだった。
成長期(マイナーからメジャーに昇格)
西区の札幌らっきょがトマトベースに焦がしバジルをちりばめた現在の札幌スープカリーのスタンダードを確立する。さらに2003年に大手食品メーカーのハウス食品とタイアップして家庭向けスープカリーの素を発売したことでスープカリーの名は全国に広まってゆく。
成熟期(スープカリー百花繚乱)
札幌らっきょのプロモーションが奏功してスープカリーというメニューがメジャーになったことで札幌市内にスープカリー専門店が乱立する。一方で伝説の名店スリランカ狂我国の味を唯一継承するgopのアナグラのようにスパイス一本勝負といったオリジン堅守派もいる。
札幌スープカリーを勝手にジャンル分けしてみる
札幌スタンダード系
SAMAはらっきょ系のスタンダードなテイストで万人受けする食べやすさが特徴。スープカリービギナーのエントリーに最適。ぜひご家族でどうぞ。
ダシたっぷり濃厚スープ系
豚骨と魚介の濃厚なあわせダシは一度味わったらクセになるKINGのスープカリー。とんこつラーメンのコッテリさが大好きな人にはイチオシのお店。
こだわりの和風テイスト系
メニューから店作りまでとことん和風にこだわった奥芝商店。写真のばっちゃんカリーは黒豆や麩など和食の食材がふんだんに使われている。
独創性で勝負のフリースタイル系
シャケありホルモンありの独創的で特定ジャンルに分類できない個性派のお店達。写真は素揚げ野菜がウリのSuage。野菜の甘み全開で肉いらず。
(番外編)本場のインド流アレンジ
インド人シェフによる本格的インド料理でおなじみモハンディッシュから暖簾分けしたデリガーデンでも本場アレンジのスープカリーを提供している。
スープカリーの魅力とは?
魅力その1 カリースープの深い味わい
カレー好きの間には「カレーライスは飲み物」なる名言(迷言?)があるが、スープカリーはスパイスとダシの効いた薬膳スープをじっくりと味わいながら愉しみたい。(曼荼羅)
魅力その2 野菜をたくさん摂取できてヘルシー
スープカリーの魅力は旬の野菜がふんだんにトッピングされていること。それも蒸したり焼いたり揚げたりと野菜ごとに合った方法で手間暇かけて調理している。(路地裏カリーSAMURAI)
魅力その3 カロリーや糖質の低いメニューも多い
スパイスとダシと旬の食材の三重奏を味わうスープカリーはたとえばシャケと舞茸とほうれん草といったローカロリーなあっさりメニューでも充分満足できる美味しさ。(IN CURRY)
魅力その4 眼を楽しませてくれる盛り付けの美しさ
具材をカレールゥで隠すことができないがゆえにスープカリーの専門店は食材の色合いやカット、盛り付けなどに工夫をこらして見た目の美しさでもメニューの魅力を訴求。(BeyondAge)
魅力その5 お店ごとのこだわりの演出
札幌市内には200軒以上のスープカリー専門店が営業していると言われているがインドやバリの神秘的な雰囲気、古き良き昭和の風景、60年代アメカジテイストなど、どのお店も個性的な演出でもてなしてくれる。
スープカリーの愉しみかた
スープカリーの注文のしかた
スープカリーの注文方法は一般的に①メインの具材を選ぶ、②スープの種類を選ぶ、③辛さのレベルを選ぶ、④ライスの種類と量を選ぶ、⑤必要ならトッピングを追加する、の5ステップである。辛さレベルはお店によって基準が異なるので注文時に確認してみるとよいだろう。
スープカリーの食べ方
スープカリーは大衆メニューなので堅苦しい食事のお作法などは存在しない。通常は具材をフォークで抑えてスプーンで一口サイズに切り分けカリースープに浸して口元に運ぶ。もちろんライスをスープに浸してもいいし、スープをライスにかけてもよい。
筆者はカリースープとライスを別々に食べるのが好きだが食べ方はひとそれぞれ。食べる順番がどうこうとコワモテの店主にガミガミ怒鳴られることもなければ、横から常連客にうるさいことを言われることもないので安心してスープカリーを愉しんで頂ければと思う。
札幌スープカリーまとめ
本サイトの投稿記事について
今後も逐次札幌市内のスープカリー専門店を訪問して美味しいお店を当サイトで紹介してゆきたい。一方でスープカリー専門店は開業と廃業が結構激しいという印象がある。こればかりはスープカリーに限らず飲食業界全体に共通する傾向なのかもしれない。
そこでファンに惜しまれつつやむなく廃業に至ったお店などは想い出や記録としてそのまま当サイトに残しておきたいと考えている。そのあたりは最新情報を扱うグルメ情報系サイトと一線を画すスタイルだが、そもそもサイト運営の趣旨が異なるのでご了承願いたい。
カレーシティさっぽろ
札幌市では「カレーを文化に!」という思いを共有するカレー料理店のオーナー達が「カレーシティさっぽろ」というカレー料理を通じた地域振興に取り組んでおり、スープカリーやルゥカレー、スパイスカレーなどの専門店が横断的に参加している。
辛いものが苦手な相方は別として筆者についてはスープカリーにこだわらず、機会があれば札幌の美味しそうなカレー料理店のメニューを片っ端から味わってみて、本業の合間に可能な限り当サイトで紹介できたらと考えているので乞うご期待。