スープカリーってどんな料理?
スープカリーは札幌発祥のカレー料理で、鶏ガラや香味野菜から抽出したダシと薬膳効果のあるカリースパイスで作ったスープに、揚げたり蒸したりして調理したチキンレッグや大ぶりの野菜をトッピングした新ジャンルのメニューである。
そんな新感覚のカレー料理であるスープカリーだが、その歴史は意外と古く、今から半世紀前に札幌市中央区のアジャンタという喫茶店が常連客向けの裏メニューとして提供していた薬膳カリィが原点であると言われている。
その後、白石区のマジックスパイスが薬膳カリィを独自に進化させてスープカリーと命名し、西区の札幌らっきょが大手食品メーカーとタイアップして全国にプロモーションを展開したことで、スープカリーは広く世間に知られるようになってゆく。
もしも近所にスープカリー屋さんが無かったら…
今やスープカリーは札幌を代表するソウルフードのひとつとして多くの人々に知られるようになったが、札幌圏以外ではスープカリー専門店のある地域はまだまだ多いとはいえない。
ゆえにスープカリー専門店の無い地域にお住まいの人がこの料理を食べたいと思った場合は、最寄りのスーパーで専門店監修のスープカリーの素を購入するか、料理レシピのWebサイトを参考に自分で調理するしかないのが実情ではないだろうか?
しかし専門店監修のスープカリーの素は高価ゆえに、冷蔵庫の余った食材で手軽にササッと作る…というにはもったいない。また本州の多くのスーパーでは、そもそもスープカリーの素という商品自体を取り扱っている店が少ないと思われる。
一方で料理レシピのWebサイトでは「カレールゥをスープに溶かす」だの、「具材をスープでしっかり煮込む」などといった、スープカリーとは似ても似つかぬ、摩訶不思議なレシピが散見される(筆者も試作したがスープカリーと呼べる代物ではなかった)。
そこで札幌のあちこちの専門店でスープカリーを食べ歩いている筆者が、全国のスーパーで手軽に入手できる一般的な食材と、フライパンひとつで簡単に調理できる方法で、本場札幌のスープカリーを再現してみた。
スープカリーを自宅で手軽に再現する
材料(1人前)
今回使った調味料は写真のとおり。全国どこのスーパーでも手軽にかつ安価に入手できる商品ばかりだが、ベル食品は札幌の食品メーカーなので、もし最寄りのスーパーで品揃えされていなければ、鶏ガラスープの素で代用しても美味しい。
なおベル食品の商品は同社の公式オンラインショップから購入することも可能なので、できればスープカリーの調理に先立ち、きちんとベル食品のガラベースを用意して、少しでも本場札幌の味に近づけたいもの。
■スパイス
・S&B赤缶〜小さじ3〜2杯(お好みで調整)
・塩〜小さじ1/2杯
・黒こしょう〜小さじ1杯
・乾燥バジル〜小さじ1杯
・オリーブオイル〜大さじ2杯
■スープの素
・カゴメトマトペースト〜個包装チューブ1本
・ベル食品ガラベース〜個包装チューブ1本
・ハウス7種のスパイスペースト〜小さじ1杯
・すりおろしニンニク〜小さじ1杯
・すりおろしショウガ〜小さじ1杯
・TV和風だしの素〜小さじ1杯
・料理酒〜小さじ1杯
・醤油〜小さじ1/2杯
・水300ml
■具材(一例)
・鶏モモ肉〜100g
・ジャガイモ〜1個
・ニンジン〜1/2本
・カボチャ〜スライス3枚
・シメジ〜1/2株
・玉ネギ〜1/4個
・ピーマン〜1/2個
※具材は魚介や葉物野菜はもちろん豆腐や納豆など自分が食べたいものなら何でもよい。
S&B赤缶はスパイスだけのものを選ぼう。奥側のカレーミックスはフレーク状のカレールゥなので、とろみが出てサラサラなスープにならない。
つくりかた
材料の下ごしらえ
スープカリーは煮込み料理ではないので、ジャガイモとニンジンはレンチンして野菜の内部までしっかりと火を通しておく。札幌スープカリーは大ぶりにカットした北海道産野菜を使用するのがルールだが、家庭用なら手軽な一口サイズで構わない。
冷蔵庫に残っていたカボチャ、玉ねぎ、シメジ、ピーマンを使用。札幌スープカリーの魅力は食材を選ばずに有り合わせの具材で調理できること。
筆者は天然塩と黒こしょう、乾燥バジルをすり込んで冷蔵庫で数日間寝かせた鶏肉を使用したが、新鮮な肉に塩コショウしてそのまま焼いても良い。
S&B赤缶プラスαだけで美味しいスパイスの出来上がり。今日は刺激が欲しい気分なので、鷹の爪とクミンシードを少し加えて辛さと爽快感を強調。
ボウルにスープの素を入れる。今回は道外の人が手軽にトライできるように、ガラベースの代わりに味の素の丸鶏がらスープの素を小さじ1杯加えた。
具材を炒める
フライパンにサラダオイルをしいて玉ねぎとシメジを炒める。カレールゥを作るわけではないので飴色になるまで根気よく玉ねぎを炒める必要はない。全体的にしんなりして香ばしい匂いが立ち上ってきたら充分。
玉ねぎとシメジが焼けたら器に移す。ここから根菜類を焼く→肉を焼く→スープを作って器に注ぐまであっという間なので具材が冷める心配は無用。
続けて根菜類を炒める。ジャガイモとニンジンはすでにレンチンして中心まで加熱してあるので軽く焼き目をつけて香ばしさを増しておこう。ピーマンやカボチャはレンチンせずにそのまま焼いてもあっという間に火が通る。
焼けた根菜類は玉ねぎやシメジの上に盛り付けてしまう。家庭でスープカリーを作る場合はこれくらいのサイズにカットした方が食べやすい。
鶏モモ肉を焼いてゆく。鶏肉以外にも豚肉、牛肉、ラム肉、シーフードなど何でも合う。挽き肉でキーマカレーに挑戦するのもバリエーションが増えて楽しい。
鶏肉が焼き上がったら野菜同様にどんどん器に盛り付けてゆく。このレシピはあっという間に完成するためしっかり下準備してから調理を始めよう。
カリースープをつくる
肉と野菜が仕上がったら、フライパンの残り油にオリーブオイルを足し、スパイスを軽く炒めてカリーの香りを引き立てつつ焦がしバジルを作る。焦げつかせると苦くなるので10秒程度炒めたらすぐにスープの素を投入する。
最近はすっかり暑くなってきたので、トマトペーストの代わりにトマトカット缶(大さじ3杯)で代用してさっぱり風味に仕上げたい。寒い冬はトマトペーストで濃厚なトマトの風味を、蒸し暑い夏はトマト缶でフレッシュな酸味を楽しむ…というように使い分けても良いかも。
スープの素を加えて混ぜ合わせながらひと煮立ちさせる。スパイスやダシの分量はこれで充分なので、もしスープのコクが足りないようなら塩を加えて調整する。
カリースープを注いで完成
味を整えたカリースープを器に注いで完成。あとはライスを添えていただくだけ。見た目の地味さはさておいて、カリースパイスの香ばしい刺激とトマトの酸味がほどよく調和した札幌スタンダードっぽいテイストに仕上がったと思う。
長年筆者のブログをご覧頂いている方ならすでにお気づきだろうが、実はこのレシピに至るまで何度やり直したか思い出せないほど。しかし苦節3年目にしてようやく納得の領域に到達できたのではないかと自画自賛している。
こちらは辛党向け。赤唐辛子をガツンと効かせた激辛スープに、香ばしく焼いたチキンと野菜をトッピング。まるで火山のようなニンジンが激辛テイストを暗示?
辛い味が苦手な人はメークインやカボチャなど、甘みの強い野菜のトッピングを増やすことでスープの刺激が中和され、食べやすくなる。
辛味のある7種のスパイスペーストの代わりに、炒め玉ネギペーストを使って、こくまろ風味に仕上げるのがコツ。
鶏ひき肉と納豆の納豆キーマカリー。札幌のスープカリー専門店では定番のメニューとなっているのでラインナップに加えてみた。その他の具材はジャガイモとシメジ、玉ねぎ。
こちらは定番のナスのほか、白ごまをまぶした和風チックなスープの底に、キャベツ、小松菜、シメジ、玉ネギをびっしりと敷き詰めた、野菜たっぷりヘルシー仕様となっている。
スープを注ぐ前。底面の緑色野菜が見えるだろうか?ちなみに筆者が鶏肉を好むのは獣肉アレルギーだから。
実は筆者はグルテンアレルギーもある。幼少から身体の湿疹やかぶれに苦しめられており、周囲からはアトピー性皮膚炎なのでどうしようもできない…などと言われていたが、獣肉とパンやうどん、洋菓子などのグルテンを絶ったら、きれいさっぱり完治した。
一般的なルゥカレーといえば豚肉と小麦粉が使われることが多いため、筆者のような食物アレルギーを持つ人にとってスープカリーはまさに救世主。もし食物アレルギーによってカレー料理を諦めている人がいたら、ぜひこのレシピを参考にして頂ければと思う。
札幌スープカリーの良さをもっと知ってもらいたい
今回のまとめ
以上、自宅で手軽に作ることができる札幌スープカリーのレシピだったが、ひとくちにスープカリーといっても専門店の味は千差万別であり、また個人の味覚や味の好みも人それぞれなので、今回は筆者の主観で最もベーシックと思われるテイストを狙ってみた。
ちなみに材料をカットしてから仕上げまでの所要時間は料理に手慣れた人だと15分程度。ワンパンで手早く調理できるうえに食材費は1食あたり500円以下とリーズナブルなので、とにかく自宅で手っ取り早くスープカリーを食べたい人にはうってつけのレシピだろう。
もちろん専門店の複雑で繊細な味わいには及ばないが、カレールゥをダシ汁で溶いたようなヘンテコリンな料理に比べると、はるかに本場札幌のスープカリーに近い味であることは保証するので、興味のある人はぜひトライしてみて欲しい。
今後も引き続き札幌エリアの絶品スープカリー専門店もどんどん紹介してゆきたいので、この記事を気に入ってもらえたら、ブログで紹介した専門店の実食レビューなどもあわせて読んで頂けると嬉しい限り。