見どころ満載の緑あふれる散策スポット 天神山緑地
JR札幌駅から南に約5kmのところにある小さな山。
札幌市営地下鉄南北線のシェルターからほど近い住宅街の中にあるこの山は、天神山と呼ばれ、緑に覆われた美しい緑地として整備されています。
天神山緑地は、広さ約6.4ヘクタールほどですが、藻岩山や札幌市街の眺望を楽しめ、天神藤や文学碑などの見どころも豊富です。
今回は、手軽な散策コースとして親しまれている天神山緑地をご紹介します。
天神山緑地とは
天神山緑地は、札幌市営地下鉄南北線の南平岸駅と澄川駅の中間地点にある、標高約85mの天神山を利用した緑地です。
天神山は、豊平川の流れによって形成された独立丘陵です。
縄文文化~擦文文化の土器や石器、アイヌ文化期のチャシ跡などが見つかっており、天神山では約6千年前から人々が生活していたと考えられています。
明治時代になると周辺の開拓が本格化し、天神山付近はリンゴの名産地として知られるようになりました。
この頃、天神山の所有者であった人物が、菅原道真公=天神様の御分霊を山に祀ったことから、この山は「天神山」と呼ばれるようになりました。
現在、天神山緑地は、住宅街に囲まれながらも四季折々の自然や札幌市街地の眺望を楽しめる市民の憩いの場として親しまれています。
天神山緑地の魅力
四季折々の動植物
天神山緑地の魅力の一つは、豊かな自然です。
春には桜や梅、初夏にはアジサイ、秋の紅葉と、四季折々の草花を楽しめます。
また、野鳥やキタキツネなどの野生動物に出会うこともあり、自然観察にもおすすめです。
冬の天神山緑地で出会ったキタキツネです。
可愛らしい姿につい近づきたくなりますが、エキノコックスという寄生虫を持っている可能性があります。
見かけたら、エサを与えたり触ったりせず、遠くから眺めて愛でましょう。
天神藤
天神山緑地の大きな見どころの一つが、樹齢200年を超える「天神藤」です。
開拓時代に入植者によって持ち込まれた北海道最古の藤の木といわれ、その姿は甘い花の香りと相まって圧巻の一言です。
天候に恵まれると、平日でも駐車場が満車になるほどの人で賑わい、地元TV局スタッフが取材に訪れる人気スポットです。
毎年5月下旬~6月初旬が見頃です。タイミングが合えばぜひ訪れていただきたい見どころの一つです。
展望テラスからの眺望
天神山の標高は90m弱。
「山」というより「丘」といった高さですが、緑地北側の展望テラスや芝生広場からは、札幌の中心街や藻岩山などの美しい景色を一望できます。
展望テラスにはベンチもあり、休憩にも最適です。
日本庭園
北海道産の石材を使用した日本庭園は、都会の喧騒を忘れさせてくれる静かな空間です。
池や小さな滝、季節の花々が織りなす風景は、散策に彩りを添えてくれます。
時にはキツツキが木をつつく音が聞こえ、自然の息吹を感じられるのも魅力です。
リンゴにちなんだ2つの文学碑
天神山のある平岸地区は、かつて「平岸リンゴ」というブランド名で知られたリンゴの一大産地でした。
現在は宅地化が進み、リンゴ園は姿を消していますが、天神山緑地にはその面影を偲ぶ二つの文学碑がひっそりと佇んでいます。
久保栄文学碑
札幌生まれの劇作家・小説家である久保栄の文学碑です。表には平岸のリンゴ園をモデルとした作品「林檎園日記」の一場面が、裏面には久保栄の略歴が記されています。
平岸林檎園記念歌碑
「石狩の都の外の君が家林檎の花の散りてやあらむ」という石川啄木の短歌が刻まれています。
啄木が札幌に滞在したのは半月ほどで、この短歌は平岸のリンゴ園を詠んだものではありませんが、かつての平岸の風景を思い浮かべるにふさわしい歌であることから、この歌碑が建てられました。
天神山緑地とその周辺の施設・神社
さっぽろ天神山アートスタジオ
天神山緑地の頂上近くにある「さっぽろ天神山アートスタジオ」は、世界各国のアーティストが滞在制作や調査・研究を行う国際的な芸術施設です。
平成2(1990)年にオープンした札幌天神山国際ハウスを改修し、平成26(2014)年に開館。文化・芸術に関する市民向けのイベントなども開催されています。
施設の1階の一部は一般にも開放されており、アート作品の展示スペースや文化・芸術関係の書籍コーナーが設けられています。
散策の途中で立ち寄って、アート作品を観賞したり、書籍を閲覧したり、休憩したりと、様々な過ごし方ができます。
天神山に鎮座する神社
天神山には、歴史を感じさせる2つの神社が鎮座しています。
相馬神社
明治35(1902)年に創建された相馬神社は、福島県の相馬太田神社の分霊を祀る神社です。
元々は別の場所にありましたが、大正5(1916)年に、札幌神社(北海道神宮)の遥拝所があった天神山の現在地に移転しました。
境内には樹齢300年を超えるシバクリのご神木や、平岸村開村五十年記念碑などがあり、平岸・澄川地区の鎮守社として信仰を集めています。
平岸天満宮・太平山三吉神社
天神山の名の由来となった平岸天満宮は、明治36(1903)年に札幌の豪商・南部源蔵によって創建されました。
南部源蔵は故郷の福岡県の太宰府天満宮の分霊を祀りましたが、天満宮の祭神である菅原道真が「天神様」とも呼ばれることから、いつしかこの山も「天神山」と呼ばれるようになりました。
元は天神山の頂上(現在のさっぽろ天神山アートスタジオ)に鎮座していましたが、昭和57(1982)年、現在地に太平山三吉神社が創建された際にその敷地内に遷宮。
現在は、一つの社殿に二つの神社が祀られる珍しい神社となっています。
天神山緑地で自然と歴史に触れるひと時を楽しむ
天神山緑地は自然と歴史を満喫できるスポットが豊富な緑地です。
春には桜や梅、夏には緑あふれる木陰、秋には紅葉、冬には雪景色と、四季折々の美しい自然を満喫できます。
また、相馬神社や平岸天満宮・太平山三吉神社などの神社の他、文学碑や展望テラスなどもあり、散策を楽しみながら地域の歴史や文化に触れることができます。
さらに、散策路の坂道はロードヒーティングになっており、冬も安心して散策を楽しめます。
天神山緑地で自然と歴史に触れ、心身ともにリフレッシュするひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。