琴似発寒川をゆく(中流域 / 後編)
前編の内容
琴似発寒川(ことにはっさむがわ)は手稲山麓を源流とする全長16.6kmの河川である。西区の平和地区、西野地区、琴似地区、八軒地区、発寒地区を経て北区の新川と合流し、そのまま真っすぐ石狩湾に注いでいる。
琴似発寒川の流域には大小20ヶ所ほどの親水公園が設けられているが前回は中流域を代表する4つの公園のうち発寒河畔公園と発寒川公園を紹介した。
後編の散策ルート
今回は前回に続いて発寒河畔公園の上流にある発寒川緑地と西野緑道を紹介してゆく。発寒川緑地が琴似発寒川に沿って弓なりに続いているのに対し、西野緑道は発寒川緑地の両端を結ぶように一直線に伸びていてまるで発寒川緑地のバイパス道路のよう。
発寒川緑地
発寒川緑地の歩きかた
発寒川緑地も発寒河畔公園などと同様に地域住民が気軽に河川に触れ合うことができるような親水公園として造成されたが、発寒河畔公園を建設した時のノウハウを活かして随所に発寒川緑地独特の造作が見られるのが特徴である。
例えば琴似発寒川は季節によって水量が大きく変動するため増水時に備えて河川敷を広くなだらかに設計したり、逆に渇水時に川が淀んでドブ臭くならないよう水際に低水護岸を設置して川の流れを狭めることで一定の流量を確保するなどの工夫がなされている。
さらに本流から人工的に分岐させた小川を設置して小さな子供でも安心して川遊びできるようなスペースがあったり、河岸にさまざまな素材を用いた敷石や階段が設けられていたりして視覚的にも楽しい。さぁ思い切り川遊びするぞ!と気分も盛り上がるというものだ。
ここから上流はヒグマに注意
親水公園として魅力満載の発寒川緑地ではあるが、このあたりからヒグマのテリトリーと人間の生活圏が重複するエリアが出現するので要注意である。特に昨年は三角山で入山者がヒグマに襲われて重症を負う事故が発生しているのでむやみに周辺の山には入らないほうがいい。
山の手橋から琴似発寒川の上流域を望む。山奥にいるような景色だが筆者の背後は交通量の多い幹線道路で橋の両端には高層マンションも建っている。しかし昨年の春先に写真左側の山中で入山者がヒグマに襲われている。
昨年あたりから頻繁にヒグマが住宅街に出没している。札幌市では南区、中央区、西区、手稲区のうち山麓に接しているエリアに集中しているのでなるべく山のふもとには近づかないにこしたことはない。写真はイメージ画像。
発寒河畔公園の四季折々
春の風景
山子橋まで続く桜並木はエゾヤマザクラ。コロナ前までは桜の木々の周辺は花見客で埋め尽くされていたが最近は少し落ち着いている様子。心穏やかにゆっくりと桜を鑑賞できて嬉しい。
夏の風景
発寒川緑地を遡上してもうすぐ西野緑道の上流側の入口に出るあたり。厳密にいえばこの辺はもう発寒川緑地というより普通の遊歩道。この先の右股橋までが琴似発寒川の中流域となる。
秋の風景
こちらは西野緑道の下流側の入口付近の発寒川緑地。あたり一面が黄金色に染まってまさに隠れた絶景ポイント。それにしてもこんな景色を日常的に見られる近隣住民が心底うらやましい。
発寒川緑地のみどころ
山子(やまっこ)橋
山子橋は琴似発寒川と左股川の合流地点にある木製の橋。山子とは木こりや炭焼など山林で働く人という意味で、山と共生してきた西野の歴史を子孫に伝えたいという想いを込めて命名。
ふれあい広場
発寒川緑地と西野緑道の下流側入口が交わるあたりをふれあい広場といい、緑地の造成が周囲の良好な景観の形成に寄与しているとして1991年に第5回札幌市都市景観賞を受賞した。
ひよどり電車文庫
個人宅の一室で近隣の子供達のために私設図書館を開設していたところ札幌市が退役した路面電車を寄贈してくれることになり「ひよどり電車文庫」が誕生したというエピソードがある。
発寒川緑地のみどころ
サイクリングロード
発寒川緑地には約1.5kmのサイクリングロードがある。サイクリングロードとは別に散策路もきちんと設置されているので安心して走行できる。
テニスコート
発寒川緑地には硬式テニスコートが1面設けられていて誰でも無料で使用できる。使用にあたっては事前に西区土木センターへ問い合わせしたい。
パークゴルフ場
パークゴルフは道東の幕別町発祥の誰でも気軽にできる簡易ゴルフのようなスポーツだ。こちらも無料で利用できるが道具の貸出は行っていない。
西野取水場
札幌市水道局の上水道施設で1日あたり16千トンの水を取水して西野浄水場へ送っている。まさに西野地区4万人の水瓶といった感じ。
発寒川緑地へのアクセス
西野緑道
西野緑道の歩きかた
西野緑道は発寒川緑地にあるパークゴルフ場付近から右股橋(みぎまたばし)手前までの全長1.25kmの遊歩道であり、琴似発寒川に沿って弓状に続く発寒川緑地を直線的にバイパスするように伸びている。
かつて西野地区は米作地帯だったが日本の高度経済成長期に札幌市の都市化が進んだ結果、西野地区も農地から宅地に転用されることに決まったが、地元民の強い要望によって農業用水路を公園(西野緑道)として遺すことになった。
西野緑道の四季折々
春の景色
西野緑道は350本の八重桜が植えられている。発寒川緑地の淡いエゾヤマザクラに比べるとこちらは紅梅のような鮮やかなピンク色。一週間後には沿道は散った花びらで埋め尽くされる。
夏の景色
夏の西野緑道はその名のとおり緑一色となる。遊歩道のところどころに東屋やパーゴラが設置されていて適度な日陰と休憩場所を提供してくれるので高齢者も無理なく散歩を楽しめそうだ。
秋の景色
白樺とイチョウの見事なコントラスト。公園造成にあたり樹木をそのままの状態で残すことにしたそうだ。樹木ごとに取り付けられた説明書きが地元住民の愛着を物語っている。
西野緑道のみどころ
左水無川
左水無川(ひだりみずなしがわ)はかつて西野の稲作を支えた用水路のオマージュである。上流域は渓谷、下流域ではゆったりした流れや池を再現して散策者の目を楽しませている。
テニスコート
西野緑道にはテニスコートがあり秋には周囲のイチョウ林が見事な黄金色に染まる。その裏手には野球場もあり近隣の小学生達が野球に熱中している。犬と散歩している人も多い。
右股橋に到着
西野緑道は琴似発寒川の右股橋の少し手前で発寒川緑地から続く散策路に再び合流する。ここから先にもいくつかの公園があって平和の滝で道が途絶えるが今回は時間的にこのあたりで折り返すのが無難だろう。付近にある西野神社を参拝してから帰路につこうと思う。