秋の豊平峡ダムを堪能してきた…
生活インフラを担う多機能ダム

豊平峡(ほうへいきょう)ダムは、札幌市南区にある巨大施設である。豊平峡ダムは、札幌市のシンボルのひとつ豊平川の治水と、札幌市への水道水の供給、そして水力発電による電力供給など、札幌市民にとって重要な生活インフラ機能を有する多目的ダムである。
また豊平峡ダム一帯は、支笏洞爺国立公園に指定されている。ダム周辺は切り立った岩盤斜面に囲まれた景勝地であり、夏の深緑、秋の紅葉は多くの観光客を惹きつけてやまない。特に秋の紅葉は市内有数の美しさであり、今では林野庁のダム湖100選に選定されるほど。

豊平峡ダムの背面にまわるとこんな景色。まさに人口190万人の札幌市民の巨大な水瓶といった印象。左の建物には資料館があるらしい(次回再訪)。
豊平峡ダムでは管理用道路の補修や、斜面の安定化、トンネルの漏水対策など、定期的な保守工事が行われている。落盤防止ブロックも迫力あり。

豊平峡ダムの歴史と由来

豊平峡ダムは、明治時代から昭和初期にかけて、豊平川流域で頻発した深刻な洪水被害を防ぐために建設された。当時の豊平川は暴れ川で、中流~下流域の堤防が洪水のたびに決壊し、特に1961年の大洪水では、札幌市街地中心部まで浸水するほどの被害を受けた。
そこで札幌市は洪水の元を絶つべく、1967年に治水ダムの建設工事に着工する。その後5年の歳月をかけて1972年に豊平峡ダムが竣工するが、奇しくもこの年は、札幌冬季オリンピックが開催された年でもあり、五輪特需と相まって、札幌は以後急速な発展を遂げてゆく。

写真のクルマは管理事務所の車両。環境保護のため一般の見学者のマイカー乗り入れは禁止されており、電気バス(後述)か徒歩でのアプローチとなるので注意すべし。
豊平峡と命名したのは明治時代の漢詩の大家であった国分青崖(こくぶせいがい)、ダム湖は定山渓温泉開祖の美泉定山(みいずみじょうざん)和尚にちなんで定山湖と呼ばれている。
今シーズン最後の観光放水を見学
間近で見るダムはド迫力

豊平峡ダムはコンクリート製のアーチ式ダムであり、堤防の高さは102.5メートル、堤防上部の長さは305メートルである。中央区の大観覧車ノルベサの高さが78メートル、西区の五天山の標高が303.5メートルなので、いかにスケールの大きな人工構造物なのかよくわかる。
札幌市への水道供給に加え、水力発電機能も有する豊平峡ダムであるが、その発電量は最大51,900kwとのこと。環境省統計によると、一世帯の年間エネルギー消費量は3,950kwらしいので、単純計算すると、一回の放水で13世帯が一年間に使用する電力を賄えることになる。

ダム周辺の撮影に余念のない弊社F嬢。堤防両端に頑丈なフェンスが設けられているとはいえ、高所恐怖症の筆者は終始落ち着かない心境であった…。
堤防の見学路へゆくには、停留所からこの橋を渡ってゆく。すでにこの時点で筆者の足はすくんでいるが、堤防上からの写真撮影はマストなので腹を括って渡りきった。
それにしてもひとつひとつの構築物や施設がとても迫力ある。来訪当日はすでに紅葉のピークも終わり、あいにくの曇り空だったが、来年は見頃シーズンに再訪したい。

圧巻のダム放水

間近で見る放水口は大迫力。毎分何トンくらいの水を放出しているのかわからないが、これだけ豪快に放水しても、ダム湖水面は特段の変化がみられないのが凄い。豊平峡ダムの観光放水は毎年6月1日~10月31日の期間限定で行われている。猛暑の時期に涼みにくるとよいかも。
ちなみにこの画像は、筆者のスマホに望遠レンズを装着して撮影している。一眼レフを携行していた頃に比べて、スマホ用望遠レンズはウエストバッグのポケットにコンパクトに収納できる上に、望遠レンズとして十分な仕事をしてくれる。スペックは関連記事をご覧ください。

真上から放水口を眺めたところ。ダイレクトに川に放水するのではなく、リフレクター(?)らしきコンクリート板を介して水流を弱めているようだ。
ダム建設工事で殉職された方々の慰霊碑。昭和40年代の建設なので、現在よりも労働安全衛生技術が発達しておらず、工事は危険極まりなかっただろう。

展望台から晩秋の深山幽谷を鑑賞
展望台も楽しむなら時間に余裕を

定山渓ダムには展望台もある。展望台からは写真のように、堤防上の見学路や観光放水の様子を俯瞰することができる。間近で見る豊平峡ダムは迫力満点だが、展望台からは雄大な全景画像を撮影できるので、せっかく定山渓ダムに来たのなら、ぜひ展望台も訪れたい。
ちなみに我々はこの日の夕方にバスで札幌に戻らねばならなかったので、豊平峡ダムに到着するや否や、90分程度の強行軍で主だった見どころスポットを漁り回ったのだが、ゆったりと展望台の景観を楽しみたいなら、定山渓ダムは旅程の前半に入れておくべきだろう。

展望台はロープウェイに乗車する方法と散策路を歩いて登る方法の2通り。スケジュールに余裕の無い我々は、待ち時間がもったいないので歩く。
展望台の様子。このお立ち台がもっともキレイに豊平峡ダムの全景写真が撮影できる人気スポット。他にはキッチンカーが4台ほど出店していた。

なぞの遊歩道を発見…

展望台広場に抜ける直前に、突如として遊歩道の入口が出現した。当日は落石の恐れがあって通行止めとなっていたが、はたしてこの遊歩道はどこへ抜けるのだろうか?ネット検索すると、麓の駐車場からダム湖に向かう散策ルートは簡易コースと上級コースの2つあるらしい。
おそらくこちらが上級コースとなるのだろうか?どのみちこのあたりはヒグマの生息域とガッツリ被っているため、落石リスクが無くたってわざわざ進入したいとは思わない。都会育ちの筆者とF嬢は、大人しくもと来た道を引き返し、電気バスの停留所へ向かったのだった…。
豊平峡ダムのゆきかた
営業時間とアクセス

豊平峡ダムの電気バスは、例年5月~11月初旬にかけて運行しており、冬季間は運休となる。あわせて遊歩道も閉鎖されるようなので、もし豊平峡ダムを訪れるのであれば、ゴールデンウィークから晩秋までのいずれかの時期となる(ただし外国人観光客が非常に多い!)。

豊平峡ダムの麓には250台程度が駐車できる無料パーキングがあり、この先は電気バスに乗り換えてダム湖を目指す。ちなみにサイクリングもNGだ。
バスで豊平峡ダムに向かう場合は、定山渓温泉付近の定山渓観光案内所でダムライナーの切符を購入する。あっという間に完売するので要注意。

定山渓観光案内所の展示物

定山渓観光案内所では、定山渓温泉周辺のイベントガイドや、ダムライナー(豊平峡ダム直行バス)の切符販売のほか、定山渓にまつわる展示も行っており、その様子はミニ郷土資料館といった雰囲気。もしお時間があればぶらりと立ち寄ってみるのも一興かと…。