宮の森緑地ってどんな場所?
高級住宅街にある小さな山
宮の森緑地は札幌市中央区宮の森地区にある、東西に細長く伸びた馬の背状の小さな山だ。通称「なまこ山」」と呼ばれるこの小さな山は、閑静な高級住宅街にぐるりと囲まれており、南西側入口のすぐそばには、本郷新記念札幌彫刻美術館が建っている。
彫刻美術館からさらに山側に登ってゆくと、大倉山スキージャンプ場や札幌オリンピックミュージアムが、また円山方面には北海道神宮や円山動物園、円山公園、円山原始林などもあって、宮の森緑地の周辺はみどころスポットが盛りだくさんである。
宮の森緑地を歩いてみる
彫刻美術館側入口から出発
本郷新記念札幌彫刻美術館側の入口を覆う緑のパーゴラ。青々とした植物が生い茂って夏は涼しげだ。ここをくぐり抜けると左手に山頂へ向う階段が現れる。
パーゴラの右側では、札幌を代表する彫刻家である本郷新の作品「鳥を抱く女」が来訪者を出迎えてくれる。
初夏はパーゴラの藤がきれい…との評判だが、今年は白い花がちらほら見える程度。はてどうしたものか…。
山頂へ向かう階段を登る
パーゴラをくぐり抜け、急勾配の階段を登って山頂へ向う。写真は階段の中腹から振り返って撮影したもの。階段の登り口にある立派なポプラの老木が来訪者の目をひく。
山頂を尾根伝いに歩く
山頂は平坦な小径が続く。それにしても住宅街の真っ只中に自然豊かな緑の隧道があるのは不思議な気分。まるで原生林に迷い込んだかのようだが、ヒグマに遭遇する心配は皆無。
小径の路面は荒れている。岩盤なのか風化したコンクリなのか不明だが、散策時は歩きやすい靴で出かけたい。
宮の森フランセス教会側入口に到着
登り始めて10分足らずで反対側(宮の森フランセス教会側)の入口に到着。急な勾配と路面の凹凸にさえ注意すれば、老若男女を問わず誰でも気軽に散策できる手軽なコース。
階段は札幌軟石らしき石材が使われている。開拓期の建築物の廃材でも再利用したのだろうか?
宮の森フランセス教会側の入口付近に設置された「太陽の母子像」も本郷新の作品である。
宮の森フランセス教会は1800年代のフランスの大聖堂を宮の森に移築した本格的な結婚式場。
宮の森緑地の秋
宮の森緑地は秋になるとあたり一面が黄色に染まり華やかな雰囲気を醸し出す。秋の札幌は澄みきった大気と明るい日差しの天気が続く、四季の中で最も過ごしやすい時期だ。
彫刻美術館側入口のパーゴラ
黄色い絨毯で埋め尽くされたパーゴラ下。侘び寂び情緒に訴えかけてくる本州の紅葉と違い、北国の秋はどこまでも陽気だ。歩くたびにサクサク聞こえる枯れ葉の軽やかな音が心地よい。
ポプラ下の階段
ポプラの老木を右に曲がったところにある山頂へ向う階段の様子。春から夏にかけて樹木の葉が生い茂っていた一帯は、すっかり視界が良くなって青空を見通せる。
山頂の小径
秋の山頂。秋の柔らかな日差しと樹木の影が織りなす色彩のコントラストが美しい。あと1ヶ月もすると周辺の山々の山頂付近で初冠雪が見られるはず。これから長い厳冬期の始まりだ。
宮の森フランセス協会側の階段
宮の森フランセス教会側の入口へ向かう階段を降りる途中にて。誰かに声をかけられたような気がして振り返ると、背後から差し込む秋の日差しが神々しくてまるで天国への階段のよう。
宮の森緑地の冬
冬の宮の森緑地。冬季は除雪されないため何度も雪中に足を取られながらの強行軍となったが、なんとか山頂までたどり着くことができた。よほどのモノ好き以外は推奨しない。
冬季は笹薮や樹木の葉っぱが無いので宮の森緑地の周辺をよく見渡すことができる。こちらは三角山小学校方面。
反対側の円山方面の様子。宮の森緑地は高級住宅街の住人達にとってはまさに自然の裏庭といった存在だろう。
周辺のみどころスポット
本郷新記念札幌彫刻美術館
本郷新記念札幌彫刻美術館は、札幌市出身の彫刻家として活躍した本郷新のアトリエを、彫刻美術の発展に貢献したいという故人の遺志により、彫刻専門の美術館として改装したものである。館内には本郷新の作品を中心に1,800点あまりの彫刻作品が展示されている。
また同美術館は北海道を代表する建築家の田上義也の設計である。田上義也は札幌市豊平川さけ科学館や中島公園のこぐま座、もいわ山ロープウェイ山麓駅付近にある旧小熊邸など、札幌市民にはおなじみの建築物を数多く手掛けた。
北1条・宮の沢通から本郷新記念札幌彫刻美術館へ続く彫刻の道には、本郷新の作「奏でる少女」が佇む。
大倉山スキージャンプ場
本郷新記念札幌彫刻美術館から大倉山方面に坂道を登ってゆくと、大倉山スキージャンプ場がある。大倉山スキージャンプ場は1972年の札幌冬季オリンピックの開催に向けて開業した国際規格のラージヒル・スキージャンプ場で、世界5大ジャンプ競技場のひとつでもある。
大倉山スキージャンプ場のてっぺんには展望台が設けられていて、ジャンプ競技が開催されない日は一般の来訪者もリフトで展望台にゆくことができる、特に夏場は札幌市の都心部を一望できる美しい夜景スポットとして、多くの観光客が訪れる。
札幌オリンピックミュージアム
札幌オリンピックミュージアムは大倉山スキージャンプ場に隣接する博物館で、1972年にアジアで初めて開催された札幌冬季オリンピックをはじめとする様々なウインタースポーツにまつわる展示物を見学できる施設である。
冬季オリンピックの歴史やアスリート達が実際に使用したウェアや道具などが豊富に展示されており、スキージャンプやクロスカントリースキー、ボブスレー競技を臨場感たっぷりに体験できるシュミレーターも人気だ。
札幌市円山動物園
札幌市円山動物園は1951年に開園した北海道で最初の動物園であり、現在150種ほどの動物が飼育されている。円山動物園では旭山動物園(旭川市)を参考にした行動展示を積極的に採り入れており、動物たちのリアルな生態を間近で観察できるのが特徴である。
宮の森緑地から札幌市円山動物園に行くには、宮の森フランセス協会へ向かって彫刻の道を下り、「奏でる少女」のある分岐を右に進んで藻岩山麓通に出て、円山競技場方面へ15分ほど歩く。もし迷いそうなら北1条・宮の沢通に出てしまった方がわかりやすい。
北海道神宮
円山動物園の隣には北海道の総鎮守として知られる北海道神宮がある。北海道神宮は北海道開拓に着手する際に、明治天皇の命により1869年に北海道開拓の守護神として大国魂神、大那牟遅神、少彦名神の3柱を祀ったことが始まりである。
北海道神宮の敷地内には境内社として開拓神社、鉱霊神社、穂多木神社もあり、一年を通して毎日多くの参拝客で賑わっている。近年は札幌市を訪れる外国人観光客にとって札幌観光のテッパンルートとなっているようだ。
宮の森緑地のゆきかた
宮の森緑地は知る人ぞ知る札幌の隠れ探訪スポットである。なお今から20年前に宮の森緑地の北側にタワマン建設計画が持ち上がったが、この一帯の景観を守りたい地域住民が行政に働きかけて15m以上の高層建築物の建設を規制することになったという経緯がある。
宮の森緑地は彫刻美術館を訪問したついでにぶらりと立ち寄りたい場所である。ただし近隣の住民にとっては思い入れのある地域の大事な財産でもあるので、往訪の時間帯に配慮したり、ゴミやタバコのポイ捨てはしないなど、マナーには充分気をつけたい。
アクセス
・地下鉄東西線西28丁目駅からJR北海道バス(環20)に乗車し、彫刻美術館入口停留所を下車し、徒歩5分
・駐車場なし
・営業期間は特段無いが冬季の除雪は行われないので要注意
参考文献等
・札幌市公園検索システム
・さっぽろ文庫96大倉山物語(札幌市教育委員会編/北海道新聞社)
・札幌市宮の森緑地北地区計画の決定について
・ウェブマガジンカムイミンタラ133号